前回のように写真を撮り、SNSにUPした悠斗の前で綾香はすぐに『いいね』をする。

「いいねの一番ゲット!」
「は?」
「悠斗さんフォローしてるの」
 綾香がページを見せると悠斗は「マジか」と、驚きと照れが混じった小さな声で呟いた。

「スマホ貸して」
「これ?」
 綾香は素直に悠斗の手に自分のスマートフォンを乗せる。
 悠斗は綾香のスマートフォンを受け取ると、画面をさっと操作した。
 ピルッと鳴る聞きなれない着信音に綾香は首を傾げる。

「連絡先交換した」
 聞き間違いではないかと思うような言葉を言われながらスマートフォンを返された綾香は、真っ赤な顔で狼狽えた。
 
「これでいつでも連絡できるな」
「たくさん連絡しちゃうかもよ?」
「いいよ」
 そう言いながら、悠斗は綾香の目の前で自分のスマートフォンを操作する。

『来週も一緒に食べないか?』
 悠斗に向けられた真剣な眼差しに、綾香は悠斗とスマートフォンを何度も交互に見てしまった。
 答えなんて決まっている。
 
『あの時間にあの場所で』
 綾香がメッセージを送り返すと、悠斗は嬉しそうに目を細めた。

    ◇

 悠斗と友達以上恋人未満という、甘くて切ない関係になったけれど、仕事で彼に甘えるわけにはいかない。
 綾香は細かいリサーチデータを広げながら、どうすれば彼に追いつけるか悩んでいた。
 
「新しいって難しい」
 綾香は自販機で購入した温かいカフェオレを両手で包み込みながら資料を眺める。

「どう? 順調?」
「野々山さん、もう体調はいいんですか?」
「何年ぶりかのインフルエンザで、高熱にびっくりした」
 代わりに行ってくれてありがとうと野々山は綾香にお菓子を差し出した。