「……悪い」
 悠斗の手がパッと離された綾香が振り返ると、照れて顔を隠した姿が見える。

 あぁ、ドキドキしていたのは私だけじゃないんだ。
 ホッとした綾香は思わず口角が上がってしまった。

 キュウリをサラダに行儀よく乗せ、テーブルに運ぶと、豪華すぎる食事に再びお腹がグゥと鳴る。

「先に写真撮っていいか?」
「SNSにアップね」
 艶々の炊き立てごはんがお茶碗の中で湯気を出している。
 こんなおいしそうな料理をSNSにアップするなんて。
 
「飯テロだわ」
「そんなこと言われたのは初めてだ」
 笑いながら投稿した悠斗はすぐに『いいね』がついたと綾香に見せてくれた。

「そんなにすぐ『いいね』されるの?」
「あぁ。結構見てくれる人が多くて」
 だからハマってしまったと、テーブルにスマートフォンを伏せて置いたのに、ペロンペロンと通知が来る。

「すごいのね」
「さぁ、食べよう」
 感心する綾香に箸を手渡した悠斗は、手を合わせる。
 
「いただきます」
 綾香も手を合わせると、まず味が気になっていたマグロのカルパッチョに手を伸ばした。
 
「おいしい」
 こんなおしゃれな食べ方なんてしたことないけれど、さっぱりとしていて、爽やかな酸味と塩気が良く合う。
 温かいお米も久しぶり。お湯を注ぐのではない味噌汁も。
 全部おいしい。

「天才ね」
 綾香が真面目な顔で褒めると、悠斗は笑った。