学芸会の準備は賑やかに始まった。
「魔法使いのマント、青色の方が良いよね?」
小道具の係になった理央が、ミシンを前に聞いた。
「ちゃんと魔法使いらしくね。簡単なものは作らないと。」
「家来役の服、中等部の制服借りるって。大体ぴったりだったって。」
「良いね良いねえ。恋のドレスはピアノの発表会用のを借りるんでしょう?」
「こっち段ボールがなーい」
「こっちスプレーがなーい」
「こっち絵の具がなーい」
「こっちマーカーがなーい」
「めんど。僕先生と近所の量販店行ってスプレーとか買ってくる。」
教室の窓際でお城の柵になる板と板を釘で付けていた宗介が口を開いた。
「恋は?。恋も連れてくから。」
黒板の前に固まって発声練習をしていた俳優達の一団から、美風が顔を上げた。
美風は椅子の背もたれをお腹に座ってシナリオを開いていた。
「恋!スプレー買い行くぞ。手が空いてるのは俳優たちだけだろ。樋山は来なくて良いけど。」
「こっちは台詞の練習中。一人で行ってよ。」
美風がつんと澄まして言った。
「新田さんは僕と大事な掛け合いをしなくちゃならないんだ。」
「真面目にやる気もない癖に、適当言ってんなよね。恋!。」
宗介が嫌な顔をした所で、今まで教室を空けていたクラスメート達が、ガラガラと戸を開けて入って来た。
「俳優達、今練習に体育館空いてるって。」
それを聞いた美風は、立ち上がって恋の手を取った。
「新田さん、行こう。」
美風が言った。
「体育館の方がやりやすいよ。ドレスも多分準備してもらえる。」
宗介にちらりと目をやると言った。
「僕達忙しいんだ。」
美風は恋の手を引くと教室を出て歩き出した。
