そして日曜。
学校で待ち合わせをしていた恋と美風は、前庭の花壇の前で落ち合った。
「樋山くん」
恋が言うと、美風が手を振って笑った。
「新田さん、待った?」
「ううん。来たばっかり。」
「良かった、来てくれて」
恋と美風は、自転車に乗って美風の家へ走った。
美風の家は、洋風の大きな豪邸のお屋敷だった。
整然と整えられた庭の、きらきら光る噴水の周りの花壇には、咲きこぼれる様に色々な色の花が咲いている。
家の隣の駐車場スペースには屋根の下にピカピカの車が三台も置いてあって、恋は、自転車を降りる時しげしげとそれらを見ていた。
広く美しい玄関ホールを入ると、美風と同じ髪色のきれいな女の人が歩いて出て来た。
「いらっしゃい」
「母さん。わざわざ出迎えてくれなくても良いのに。」
宗介の母親はロングヘアをひとつに束ねていたが美風の母親は逆でショートヘアだった。
美風の母親はゆったりしたセンスの良い服装をしていて、恋を見ると機嫌よく笑った。
「今日はよく来てくれたわね。美風からいつもあなたの話を聞いてるわ。すっごくチャーミングなんだって。」
「チャーミング?」
「うん。そのまんま。当たってるでしょう。」
「もう可愛い可愛いって夢中よ。この家、建築家に建てさせた自慢の家なの。あなたたちの家も是非同じ建築家に作らせますからね。亅
「あなたたちの家って?」
「僕たちの家だよ。言葉通り。将来のだけど。」
「どんな家がいいかしらね。大人になったらうちに来るのね、いつ来てくれるのかしらねって、美風といつも話してるのよ。」
「来るって……?」
恋が聞くと、美風が済まし顔で言った。
「花嫁。決まってるでしょう。何だと思ったの?」
「いつもその話で持ち切りなのよ。」
「新田さんは逃げられると思わない方が正しいよ。僕はもう決めてあるんだから。式場は一流の教会で。家はこの家のすぐそば。犬を飼っても良い。いつも言ってるんだ。ね?母さん。」
「ええ。今から待ち遠しいわ。どんなウェディングドレスが良いかしらね。」
思いの外まとまっている話に、恋はうーん、と微妙な顔をして笑った。
