宗介が玄関に出ていくと、意外な事にそこには美風が居た。
美風は済まし顔で宗介の家の前に立っていた。
「何か用?」
宗介がドアノブを片手に作り笑顔で聞いた。
「新田さんが来てるって聞いて。さっき新田さんの家に行ったんだ。」
「へーえ。そう。で?。」
美風の声が聞こえたので、リビングから恋が走って来た。
「樋山くん!」
「新田さん。さっき家に行ったよ。それで。」
美風は両腰に手を添えて母親が子供を叱る時のポーズをした。
「君はなんで上野の家なんかに居るのかな?」
「居ちゃ悪い?。」
再び宗介の苛立った作り笑顔。
「隣の家って聞いてたけど、本当に隣なんだ。」
美風がちょっと深刻な様子で呟いた。
「見たところ上野の家は大きいけど庶民の家だな。古くさいし和風だし。僕んちを見せてやりたい。」
「うざった。人の家に来て。お前んちなんか見たくねーよ。恋。」
宗介は恋に顎で差して命令した。
「お前は家入ってな。」
「そんな……」
「新田さんと遊ぶために来たんだ。」
美風が言うと、宗介は美風の胸ぐらを掴んだ。
「帰れ。恋に付き纏うな。いちいちうざったいんだよ、お前!」
「放せ!」
「宗介!」
恋が止めに入ると、宗介は仕方なく美風を離した。
美風は平気な顔で宗介の掴んだ胸元を片手でパタパタ払った。
「低級。低俗。上野は暴力的。新田さん、危ないから近付かない様にね。」
「は?。何言ってんだこいつ?。恋、樋山の言う事なんか聞かないだろうね?」
「や、辞めようよ二人とも。宗介……家入って貰えば。」
宗介の怖い顔は今度は恋に向いた。
「……誰が。どこに誰を入れるって?。」
宗介の目が開いて、自分を睨んだので、恋はおどおどして、ためらいがちに言った。
「一旦帰るよ、樋山くんと。」
「僕もこんな所には居たくない。上野の家なんか。」
美風が言った。
「帰るって、じゃあお前これから樋山と遊ぶの?」
そこで、宗介は開きかけた口をきっと結んだ。
「あっそ。分かった。いい。」
「ごめんね宗介。」
「新田さんの家行けるの楽しみにしてた。お邪魔できるの嬉しい。」
「……」
宗介は小声で毒づいたが美風は構わない。
恋は靴を履いて、恋と美風は恋の家に向かった。
