「……なんてね。呪符持ってるのは事実だけど、そういうことは別に言わないから安心して。付き合ってもらえなくて残念。一旦言ったほうが仲良くなれるかと思って。」
呆然とした顔の恋に、くすくす笑いながら美風が言った。
「新田さん、上野は別に恋人じゃないんでしょ?」
美風は頷きながら言う。
「恋人だったら呪ってやる。待っても良い?。」
こわごわ会釈をして、その場をそそくさと後にしようとした恋を、美風は後ろから呼び止めた。
「言っておくけど、僕は待つけど諦めてないからね。あんまりきょとんとしてると、僕、君のこと逆に嫌いになってやる。」
美風は空を見上げて、さて、と息をつくと、つっ立っている恋に、声の調子を変えた。
「それじゃあ新田さん改めて。振られちゃったから。」
空は晴れていた。
水色に澄んだ薄い空は、爽やかな色合いを保っている。
浮かんだ白い雲が翳を作って通過していく。
美風が口を開いた。
「記念にキスしてくれたら、君が狐って事内緒にしてあげるよ。」
なんでもないことを言うような口調。
美風が、にこ、と微笑んだ。
