東塔へ行く渡り廊下で、宗介と美風は向こうから歩いてくる恋と合流した。
「恋!」
「新田さん、何の用事だったの?」
宗介と美風が言うと、恋が言った。
「先生の用事で。放送の台本に、私の名前が使われてたからチェックしてって。」
「なんで新田さんの名前が?」
「黒白王子の関係で姫って呼ばれて学校の有名人だから、放送部が使いたかったんだって。」
「出たよ。新聞部の策略が。」
宗介が言って怒り笑いした。
「黒白王子もなにもない。樋山は違うかもしれないけど、僕は一般人だ。迷惑、そういうの。うんざりする。」
「僕だって一般人だ。ほんと迷惑。なんだって言うんだろうね。学校の有名人だって。新聞部が騒ぎ立てるからでしょう。考えていくと馬鹿みたい。」
「同感。顔だけでよくここまで騒げるよ。この顔が何?。頭どうかしてる。馬鹿なんだよ、やっぱ。」
「人気があるって事は良いことだよ。」
恋が呑気に言うと宗介が舌打ちした。
と、そこで恋から目線をずらした宗介は、向こうの壁際にうららが半身隠れてじっとこっちを見ているのに気付いた。
「あれって。」
美風がそっちを見ると、うららは身を隠したが、目の良い美風にはうららがちゃんと見えたらしい。
「黃崎じゃないか?」
「だよ。」
「え?。本当?」
恋がそっちを見る頃には、うららの姿はもう見えなくなっていた。
「……」
「恋を追ってるみたいに見えた。」
宗介が呟いた。
「だよな。まずいな。また前みたいな事企んでるとしたら。新田さん、尾行されてるの気づいてた?」
美風が聞いた。
「全然。」
「ったく恋は呑気。1回体育館倉庫に閉じ込められてるんだぞ。少しは気をつけろよ。」
「だって」
「居るのは黃崎1人に見えた。またどこかに閉じ込めたりする気なら、最初から大人数で来るはずだし、何のつもりだろう。」
美風が深刻な様子で呟いた。
「恋!気をつけろよ。親衛隊と2人にならない事。僕たちから離れないこと。」
宗介が言った。
「ほんとに危ないから言ってる。良い?。絶対、人のいない場所には近づかないって約束しろよ。分かったね?」
「なんとなく、黃崎はそんなに悪いやつじゃない気がしたんだけど。」
美風が言った。
「新田さんに何かするなら容赦しない。ファンって言ってくる子、僕基本的には苦手だしね。新田さんがそうして欲しいなら、冷たく当たれるよ。」
「恋」
「私は……」
恋は困ったな、と頬を掻いた。
