会場のホールは体育館の様に広く、そこへ行くまでのホテルの廊下にはガラスケースに入ったメイク小物がぽつぽつと展示されていた。
会場には折りたたみ式の椅子が沢山用意されてあって、メイクペアはその椅子を借りてきて座ってメイクをする。
恋と理央は広い会場の隅に椅子を出して来ていよいよメイクを始めた。
まず顔に下地を塗り込むと、顔をクリーム色に見せるグリーンベースのファンデーション。
アイライナーは真っ黒で、顔料の物を使う。
「アイライナーを左右均等に引くの、難しいんだよねえ。」
恋の閉じた瞼に触れながら、理央が言った。
「でも大丈夫。お姉ちゃんで練習して来てるから。恋動かないでね。ちょっと擽ったいけど。」
アイライナーを引いた後、理央は赤い顔料で恋のアイラインに小さく円を描いた。
「お祭りの稚児のメイク、恋で絶対やってみたかったんだ。」
理央が言った。
「切れ長の目に赤いお祭りの印。リップはプルプルのグロスでピンクで。チークはわざとはたかないんだ。」
「ちょっと個性派すぎるなあ」
巡回するメイクの先生の声で恋が振り向くと、伊鞠と桂香のメイクペアが注意をされていた。
椅子に座った伊鞠の顔には、元ははっきりした目鼻立ちの美人なのにアイブロウで極太の眉毛が描かれ、頬にはピンクのチークがまん丸に滑稽に叩かれている。
「どうなっても良いわ」
「……グロスは赤」
目を瞑って宣言した伊鞠に桂香が真剣な眼差しで呟いた。
メイクの先生は困り顔をしている。
「美の祭典で、遊びじゃないんですけどねえ。」
「あちゃあだねえ、加納先輩。」
理央が恋にマスカラを付けながら呟いた。
「黃崎さんもメイク得意なんだって。負けてらんないね。よーしこっちも、もう少し……。」
鏡を持たされた恋は、自分の顔がメイクアップされていくのをただ見ていた。
