腕を掴まれて、恋が無理やり連れて行かれた場所は体育館倉庫だった。
カチャリ、とうららが戸を開けると、中は薄暗く、いつも体育で使うボールの籠に平均台。
それから10人位の女子達がたむろしていて、恋が来るのを待ち構えていた。
カチャリ、とドアを閉めてから、うららは乱暴に恋の腕を離した。
「断罪。」
うららが口を開いた。
「新田恋、調子に乗るのはいい加減にしなよ。」
恋はこわごわ周りの女子達を見回した。
「黒王子親衛隊です。新田さん、黒王子を誑かすのは辞めて頂きたい。」
黒王子親衛隊のリーダー格の女の子が堂々とした口調で口を開いた。
「私達親衛隊は、あなたが黒王子の恋人だと断じて認めません。」
「私達は二股について言ってるの」
うららが言った。
「どっちちかずで両手に花、ずるい!」
「黒王子に恋人が居るのは分かるけど、二股じゃ認めたくないんだよね。一途なら良いです。それなら嫌だけど認めてあげる。」
「認めるって……」
恋は困った顔で言った。
「宗介が恋人で、樋山くんとは何にもないよ」
「嘘ばっか!」
うららが叫んだ。
「なんともないはずない。美風様が自分の事だけ思う様にし向けて、二股かけてずるしてる!。ずるい!。」
「白王子の事も誑かすでしょ。あれ、辞めて貰えないかな?」
今度は白王子の親衛隊の1人が言った。
「恋人居るのに白王子にいちゃつくの、感じ悪いよ。ずるだと思わないのおかしいよ。私達親衛隊が許さない。」
「……」
「ね、信じられないよね。そういう事する人最悪だよ。」
うららが調子を合わせた。
それからうららは両腰に手を当てポーズ作った。
「美風様が時々やるこのポーズ!なんで私にやってくれないんだろう。悔しい。ということで、黒王子白王子の親衛隊合同で、今日はここで新田恋に反省して貰います。」
うららが宣言した。
それから、
「じゃ、行こ。」
と言うと中に居た親衛隊達をドアから順番に連れ出した。
「……」
「今日は1日ここで1人で過ごすんだよ。ざまあみなさい新田恋。」
うららはそう笑顔で言い置くと外から体育館倉庫にかちゃんと鍵をかけた。
