笛が鳴る。また生徒が走り出す。
体育の授業。
50メートルを計測していた恋は、走り終わって校庭の脇にある階段に向かった。
校庭の低い階段には既に計測を終えていた美風が座っていた。
恋に目を留めると、美風は立ち上がって恋の座っている場所の近くに座り直した。
「……見てたよ。キミは本当にきれいだね。」
美風が言った。
「新田さんって、髪の色が淡くて、妖精みたい。あやかし狐って妖精の仲間だと思う。」
宗介の計測の番になると、恋達が見ている前で宗介は走り出した。
白線に、宗介は組の一位でゴールする。
「新田さんって、上野と付き合ってるの?」
美風が聞いた。
「付き合ってないよ」
「そっか。良かった。二人で秘密を共有してたから、付き合ってるのかと思ってた。」
「……」
「話してると何かっていうと上野って出すから、ちょっと妬けたよ。あやかし狐って事についても、あいつが管理しようとしてるみたいだし。」
「幼なじみなんだ。そう見えるの?」
「うん。そんなに仲良いなんて羨ましいな。」
「そんな事はないけど。」
「何で僕はもっと早くにこの学校に来なかったんだろう。もっと早くに新田さんと出会えたら良かった。」
「そうなの?。それは……」
恋が言い終わる前に、さっと風が吹いて、恋の髪を攫った。
と、後ろから、恋と美風の肩を押して、西井多紀が現れた。
「走り終わったの?。ねえ転校生、あやかし狐っていつも言うけど、それって何?」
多紀が聞いた。
「……ううん、内緒。僕と新田さんの秘密なんだ。」
美風は微笑んで、立ち上がった。
