幼なじみは狐の子。〜黒白王子の三角関係が始動する〜







  
 

 20分休み、恋は、またまた新聞部の部室に呼ばれていた。

 テーブルの前に膝に手を置いて座っている恋。
 恋の前に、伊鞠と桂香はまた黒白王子アイテムを引き出してきた。

 
「今回のブロマイドのシリーズテーマは、切ナイ恋の味。」


 伊鞠がブロマイドを取り出しながら歌うように言った。


「切ないのないはカタカナで、モダンさを強調しているの。なんで切ないかって言うと」


 伊鞠は1枚のブロマイドを恋の前に置いた。


「上野くんが泣いてる所を押さえる事ができたからなの。珍しいでしょう?。新田さん見たことある?」


 恋がそのブロマイドをのぞき込むと、宗介が手のはらで涙をこすっている。


「……どうして」

「いえね、偶然目薬さしてるところを押さえたのよ。上野くんハンカチ使わなかったから、こういう写真が撮れたの。どう?。良いと思わない?。」

「……」


「それからまだあるわ。」

 
 伊鞠は言いながら違うブロマイドを出してきた。


「このブロマイドは珍しい。お宝ものよ。樋山くんがあっかんべしてるところを真正面から撮ったの。」


 恋が見るとブロマイドの中の美風はべっと舌先を出していた。


「上野くんと言い合いしている所を撮ったんだけど……超ポップよね。切ナイ恋の味とは関係ないけど……そういう趣向も面白いんじゃないかと思って。」

「……」

「ファンの子大喜びするわ。いい写真でしょう。他にもこのシリーズまだ沢山ブロマイドあるけど。」


 そこで伊鞠は言葉を切って、恋を見た。


「だから今日こそは、新田さんに黒白王子グッズ販売の許可サインを貰おうと思って。」

「困ります」

「ね?ね?王子達には内緒。新田さんさえ許可してくれれば、グッズ大売れ、収益は絶好調、おまけにもっと沢山のグッズが作れて、言う事なしなのよ。ね?ね?どうかお願いします。」


 膝をついて盛大に拝むポーズをする伊鞠と桂香に、恋は引きつり笑いをして手を振った。