新聞部の部室では、桂香が古い新聞の整理をしていた。
狐を抱いた伊鞠が入っていくと、振り返った桂香は伊鞠とテーブルについた。
「……」
「上野くんの狐、また学校にいたのよ。」
伊鞠が口を開いた。
「上野くんに渡してあげたいんだけど、もう帰っちゃったみたいなの。放し飼いって危ないわよね?」
「……。」
「外は車も通るし、人も多いし。保護してあげた方が良いと思ったんだけど。」
「……ベビー」
「そうなのよ。こんな赤ちゃん狐、ほっとくなんて黒王子もどうかしてる。まだ親狐が必要な年じゃない?この子。」
「……気の毒に」
伊鞠が狐の首元を撫でた。
桂香はじーーーーーっとメガネをかけた目で伊鞠の抱いた狐を凝視した。
恋は居心地が悪くなってキューンと鳴いた。
