黒白王子のファン達は、朝のホームルーム前、王子たちの様子をのぞき見するために2−1の教室の廊下に屯していた。


  
「黒王子来てる?」

「白王子、白王子っと。白王子は今日も髪がくるくるだね。」

「黒王子は反対にさらさらだけどね。いい匂いがしそうな髪。」

「あっやだやだ姫が居る。嫌になる。どうせ姫に一途なんだから。」



 
 恋の席に来ていた宗介は、あからさまに苛ついた顔で廊下を睨んだ。

「鬱陶しい。うるさいんだよ、いちいち。あいつらって何?。ファンもなにもない。狂ってる。」

「宗介のファンなんだよ。考えてあげなよ。」

「ありえない。僕は一般人だ。黒なんちゃらって呼び方のこと僕はよく思ってないどころか小馬鹿にしてる。ああうぜえ。恋以外の女子はただでさえ邪魔で鬱陶しく感じるのに。腹立つ。人の顔ジロジロ見んなっつーの。」

「新田さん」


 斜め前の席から、美風が振り返った。


「ファンって言ってくる人達、あんまりじっと見ちゃ駄目だよ。悪く言われる原因になる。新田さんは、僕たちの姫だけど、それを分かってない奴らも居るには居るから。」

「馬鹿じゃねーの、何が姫だよ。」

 
 宗介が小馬鹿にしたように言った。

 
「姫は姫だろ。変な意味ない。僕は王子じゃないけどね。あーあ、さっきからこっち見るの辞めればいいのに。よく人の見た目であそこまで騒げるよ。馬鹿なんじゃない。」

「脳味噌腐ってんだよ、あいつら。この点に関して、樋山と同意見。馬鹿なんだよ、結局。」

「美風様!」


 教室の前の廊下から、美風の顔写真の貼られた団扇を持ったうららが大きく手を振った。

 それにつられて、他のファン達も手を振ったり笑顔を作ったりする。



「黒王子、また顔しかめてる。多分騒がれるの嫌なんだろうね。」

「新聞部と同意見。有名税よ。」

「あんだけかっこよきゃしょうがないよ。我慢して貰わなきゃ。」

「あっ見て見て、白王子が黃崎さんの事見てる。」



 美風がうららに対して、軽く手を振った。

 とたんにうららは蕩けそうな笑顔を見せ、団扇をぶんぶん振ってアピールする。


「樋山、誤解されると後が面倒だぞ。迷惑。恋が巻き込まれたらどうするんだよ。」

「なんか気の毒で。頭がだけど。」


 恋は二人の間で視線を感じながら俯いた。