黃崎さんに声をかけられるまで、恋はぼうっとしていた。 ベランダから見えるグラウンド、それからその向こうに見える平和な町並みを眺めていたのである。 「ちょっと!」 そう声を掛けられて、恋はびくっとした。 振り返ると、黒髪の天然パーマの、お人形の様な女の子。 ────黒白王子の握手会の時の人だ! 恋はドキッとして、目を見開いた。