握手会の終わり頃になって、1人、黒髪の天然パーマのロングヘアの女の子が、順番が来て舞台に上がった。
美風はその子を知っているようで、愛想よく挨拶をすると、軽く握手をした。
女の子は置いてあったグッズを1種類ずつ全部買って伊鞠にお金を渡すと、恋の居る舞台袖の方を睨んだ。
それから恋が驚いたことに、よく通る大きな声で言った。
「ねえ。居るんでしょう、新田恋。」
慌てて恋が舞台袖に隠れると、美風は目を瞬いて女の子を見た。
「黄崎。やめて。」
美風が冷静な声で言った。
なるほど美風が前に言っていた告白してきた女の子というのはこの人らしい。
恋はそっと舞台袖から黃崎と呼ばれた女の子をチェックした。
お人形の様な顔立ちに、艷やかな長い黒髪の天然パーマが似合っている。たしかに可愛い子だった。
恋が、普通の人かな?と思って観察していると、黃崎さんはいきなりガクッと崩れ落ちて言った。
「美風様!。だって……。私悔しい!」
み、美風様!?
美風は呆れ顔で口を開いた。
「様はちょっと。君付けとかかな。普通は。怪しいから。前にも言ったけど。」
「どうして?。美風様は美風様じゃない!」
様付けは告白した時からだったのか。
「どうして新田恋が良いんですか?。美風様。答えてください。」
目を潤ませた黃崎さんに、美風は「ごめんね」と言ってから、
「彼女には関わらないで。」
ときっぱり言った。
