勉強会はすぐに始まった。
めいめい持ってきた問題集とノートを出して、リビングのテーブルで問題を解き始めた。
「私教えるわ。分からない所があったら言って頂戴。」
眼鏡をかけた伊鞠が難しそうな英書を読みながら言った。
「新田さん、あなた、答え見ながらやらない方が。赤で書くから覚えやすくなるのよ。」
「先輩達って頭悪そうなイメージある。新聞部だし。人のこと騒ぎ立てるし。書いてる内容馬鹿全開だし。加納先輩、それ本当に読めてるんですか?」
宗介は疑いの目を崩さなかった。
「英文?。読めてるわよ。」
「どれ?」
美風が伊鞠の英書を覗き込んだ。
「この訳は?」
「それは……」
伊鞠が答えると、美風は頷いた。
「正解です。訳も不自然じゃない。」
「……」
宗介はまだ疑っている目で伊鞠を見ていた。
「私英語からやろうっと。樋山くんが居るなら、英語やらなきゃ損だよね。教えて貰おうっと。」
「英語以外も見るよ。僕、通信教材で、大学のまでやってるから。」
「あ」
宗介が美風の問題集を見てふと口を開いた。
「なんだよ?」
「それ、僕のと同じ教材。メソッドの。」
「……ふーん」
つまらなそうに頷いた美風に、宗介はうんざりした顔をした。
「それ使ってるならできんの頷けるよ。英才教育の王道だ。パー出来メーカー。樋山は知らないのかとばっかり。ちっ嫌だ嫌だ。真似すんなよな、樋山」
「こっちの台詞。お前が会社変えれば。まあ、僕の方が上野より進んでるに違いないけど。あーあ、嫌な事聞いた。」
「それってどういう教材?」
理央が聞いた。
「英才教育の、有名な塾の通信教材。出来るやつはみんなこれ使ってて、都内の一部でカルト化してる。恋にもやれって言ったのにやらなかったんだ。全部分かりやすいメソッドで、大学のまで好きな所まで進められる。簡単だよ。駒井にも勧めるわ。」
宗介が言った。
「本当は小さい頃からやって訓練するんだけど、まあ、今からでもどうにかできるだろうな。頑張れば。やる気さえあれば、好きな所までできるから。紙質や字組まで覚えやすい様に計算されて作られてる。優秀って言われる人達は十中八九使ってる。ちょっと高いけど、簡潔で難しく考えないように解説してあるから、お勧めだよ。」
美風が言った。
「三人称単数って呪文みたい」
ノートに英単語を書き取りながら恋がぼそりと言うと、美風が吹き出した。
「三人称単数三人称単数三人称単数。ね?」
「恋、笑い取ってないで練習する。」
クスクス笑っている美風を無視して宗介がピシャリと言って、恋は肩をすくめた。


