烏に狙われたのは恋にとって余っ程ショックだったらしい。
次の日も、その次の日も烏の夢を見た恋は、外に出るのを怖がるようになった。
あの時烏の鉤爪で連れ去られてしまえばそれまでだったので、無理はなかったが、恋は今まで一度も、そんな風になった事がなかった。
家でも狐になりたがらなくなった恋を、宗介はしばらく静観していたが、そのうちにちょっと心配になってきた。
「恋」
宗介が言った。
「この頃狐の姿にならないけど、どうしたの?。眠る時にお前が狐で一緒に寝ないのが寂しい。部屋で抱き上げられないのも。家に帰った時お前が僕の足元に走り寄って来ないのも。ケージの餌が減ってないのも、ペットベッドが空なのも。」
「うーん……」
「神経質だよ。僕が言ったのは、外で狐になるなって事。家の中でじゃないよ。家の中で、抱き上げる狐が居ないのが寂しい。僕はいつも狐を膝に乗せてたのに、今では恋がそうだから、膝が軽くてならない。あの重さが好きだったのに。つまらないよ。」
恋が言われて仕方なく狐になると、宗介はさっそくと恋を抱き上げた。
「怖くない怖くない。安心しな、僕が居るからね。かわいそうに。烏が余っ程怖かったんだね。怖くない怖くない。」
宗介は恋を肩に抱きながら、そう言って恋をあやした。
