恋は、変身すると狐の姿にになったが、その狐はまだ小狐だった。
 母親は成長した姿の大きな狐なのに、子供の恋はちっとも大きくならなかった。
 なぜかいつまで経っても赤ちゃん狐の様なサイズだったのだ。
 通りすがりの人は、恋があまりに小さいので恋をよく子猫と間違えた。
 宗介はそれを気に入って、僕の小さい狐、といつもあやしたが、恋は大きくなりたかった。
 自然界では、大きく強くならないと、色々と問題が起きたのである。


 ある日、恋が小狐の姿で道路を歩いていると、向こうの方にゴミ捨て場があって、数羽の烏がゴミをつついていた。

 辺りに人は居なくて静かな気配。
 穴の開いた黒いゴミ袋からりんごの皮がぺたんと道路に落ちた。

 恋がそのりんごの皮の横を通り過ぎようとした時だった。

 いきなり一羽の烏が飛び上がって、恋の背中を引っ掻いたのだ。
 予想外だったので、恋はバランスを崩して倒れた。
 するともう一羽の烏が、今度は恋を狙って鈎爪で掴んで連れ去ろうと飛び上がった。

 違う烏に首元を突かれて、恋はひやりとした。
 烏達は恋に狙いを定めたらしい。
 走り出した恋を追って、烏達はバタバタと不気味な音を立てて羽ばたいた。

 恋は怪我をしながら、這々の体で家路へたどり着いた。
 恋はちょっと迷ってから、隣の宗介の家へ入った。