恋が諦めて、ボストンバッグを持って玄関に準備していると、間もなく小さなバスが来た。
荷物をトランクに入れて恋がバスに乗り込む。
すると、恋を待っていたのは美風だけではなかった。
「じゃーん。恋、僕です。律ちゃん来ました!。」
怒り笑いの美風の隣から手を振ったのは、鞄を持った律だった。
「律も呼んだの?」
バスの座席に座りながら恋が聞いた。
「呼ぶわけない」
怒り笑いで美風が言った。
「こいつも同じツアーに同日で申し込んでたんだ。偶然?。そんなはずあるか。」
「偶然ですよお!」
律は笑顔で言った。
「別に僕はこの間恋と会った時ケータイチェックしたなんて言いませんけど……すごい偶然ですね!。」
「律も来るならそうやって用意したのに。」
「なんで来たんだ?。せっかく僕が新田さんと2人きりで過ごす予定を立ててたのに。僕は川遊びからお昼から夜まで、全部新田さんと居る事を想定してイメトレして来てるんだぞ。邪魔だ。迷惑。断然別行動を申し立てるね。」
「良いじゃないですか別に。樋山さんは恋と2人きりになれませんよ。恋には僕が居ますからね。良いじゃないですか、恋は良いって言ってるんだし。恋恋、今日は一緒のテントで寝ましょうよ。」
「はあ?」
「狐でですよ。嫌らしいこと考えないでください。樋山さんって変態なんですか?」
「別に僕はそういうつもりじゃない!。新田さんが誤解する様な事を言うな。新田さん、向井なんかに近づかない方が良いよ。こいつキミに変な事言いだすから。危ないよ。キミが汚れる。僕はキミに汚れて欲しくないんだ。」
「嫉妬したって入れませんよ、樋山さんはあやかし狐じゃないんだから。ふふっ狐二匹の逢引ですね。楽しみだ」
「最低。新田さんと2人きりだと思ったのに。ムード丸潰れ。ったくああ嫌だ嫌だ。」
美風が毒づいた。
困り笑いの恋を乗せて、車は途中途中ツアー客を拾いながら目的地へ向かった。
