恋の期待とは裏腹に、一番最初の脅かされ役は宗介だった。
宗介は肝試しに参加したくなかった。
持ってきた本を読んでいたかったし、面倒だから早く休みたかったのだが、恋が来ていると言われて心配でついてきたのだ。
クラスメート達に送り出されて、懐中電灯を手に、宗介は森の隣の小道を進んで来た。
辺りは暗く静かで、微かに虫の声がしている。
歩いてくる人の気配に気が付いた恋は、全身からあやかしの光を出しながら草陰からひょこひょこと進み出た。
「あ」
あやかしの光を出していたし、手には火の玉のような物を持っていたが、宗介にはそれが恋だとすぐ分かった。
数秒間、宗介は恋を見ていた。
「お・ま・え・は!」
くわ、と怖い顔をした宗介に、背中を見せて逃げ出そうとした恋。
散々叱られた恋は、次の日はついに狐にはならなかった。
