事務所に行く事になっていた日、恋はいつもより早く起きた。
事務所には宗介も美風も付き添いで行くことになっていて、今日は駅から都内まで電車に乗っていく予定だった。
支度をして家から出ると、門扉の前にはなぜか美風が居て、家の塀に寄りかかっていた。
「樋山くん」
「あ、新田さん。待ち合わせは駅だったけど、暇だったから家まで迎えに来たんだ。」
それから、
「新田さんちの立地は便利だよね。駅に歩きで行けるし。ゆっくり歩いても10分かそこらだし。スーパーもコンビニも学校も近いし。僕の家はスーパー行く場合は車で行かなきゃちょっと遠いんだ。不便っちゃ不便。羨ましい。上野んちもだけど。あーあ、選べたら僕も君の隣の家を選ぶのに。」
と言って、恋の家を眩しそうに見上げた。
「樋山くんが来てくれると思ってなかったから、駅には今日は宗介と一緒に行こうと思ってたんだけど。誘っていいかな?」
「嫌だって言っても誘うんでしょ。しょうがないなあもう。僕は新田さんと2人で行きたいのに。」
宗介の家チャイムを鳴らすと着替えをした宗介が出てきた。
三人は話をしながら歩いて駅へと向かった。
