宗介は早足で恋の所まで来た。
「目つぶってな、恋」
宗介はそう言うと、恋の左手を掴んだ。
美風が恋の右手を掴んだ。
「大丈夫。」
恋は目をつぶった。
恋を挟んで宗介と美風は3人で手を繋いで吊り橋を渡った。
吊り橋は揺れなかったが、下の穴は見ると吸い込まれそうな位深かった。
律がゆったりその後ろを歩いてきて、4人はついに光る扉の前まで来た。
律が言った。
「僕はここに残ります。まだしなきゃならないことがあるから。終わったら必ずそっちへ行きますよ。恋と出会って、帰るのが楽しみになった。そっちでも、必ず出会った事を覚えてる。
恋。僕の事忘れないでくださいね。迎えに行きます。約束ですよ。宗介、恋のこと、譲って貰いますから。悪いけど美風も。あやかし狐同士、出会う事って滅多にないんだから。僕もう決めました。恋と結婚するって。」
宗介が口を開いた。
「譲らない。悪いけど、向こうじゃ話が違うんだ。狐のチビなんかに、恋をあげてたまるか」
美風が言った。
「左に同じ。新田さんは僕が貰うんだ。」
「やんねーよ。お前たちの出る幕なんかない。」
律は笑った。
「よく聞こえませんでした。多分譲ってくれるって言ったんでしょうね。ありがとうございます。嬉しいな。宗介、美風、向こうで恋を守ってください。恋!。あなたと出会えて良かった。」
すっと音もなくゲートが開いた。
真っ白い光の中に、恋と宗介と美風が足を踏み入れる。
光の中は音が聞こえなかった。
最後に律が恋に向かって何か言ったが、何を言ったのか分からなかった。
