横断歩道を渡りきったカフェ店の前で、恋は声をかけられた。
「ちょっと失礼」
声の主は男だった。
ナチュラルなおしゃれな服装に、白いマスク。
何処かで男を見たような事がある気がしたが、宗介には思い出せなかった。
「なんですか?」
「ファッションショーに興味はおありですか?」
「えっ」
「私達、ファッションショーのモデルを探しているんです。こちらのお嬢さんは、何から何までぴったり。」
男は恋の今日のファッションを褒めちぎった。
「ファッションショーかあ。良いですね。」
恋が照れて頬をかいた。
「きっと今日髪型違うから。いつもはストレートヘアなんですよ。」
「急ぐからそういうのはちょっと……」
宗介が言うと、男は畳み掛ける様に言った。
「この近くの大きなテントで主催してます。一度モデルをされてみると良いですよ。お客さんの前でお洒落を見せつけるのは癖になりますよ。」
結局、恋はファッションショーのモデルを務める事にした。
「新田さん、凄い。スカウトじゃん。いい記念になったね」
男に案内されて大きなテントの舞台袖に向かう途中美風が言った。
「あんまり調子に乗るなよ。服装でスカウトされただけなんだから。まったく。時間を使うんだから。」
宗介が言った。


