「あーあ、ケーキ食べたかったなあ」
3人で美食の町を駅に向かう途中、恋がぼやいた。
「無理言わないの。役員さんの迷惑になるだろ。」
「宗介も好きでしょう。苺のショートケーキ。食べなくてよかったの?」
「僕はシェルターで買うから。無理に外では食べない。今日食べなくても別に困らないし。お前とは違うの。」
「そういやうちでは毎日ケーキが出てたけど、最近食べてないな」
美風が言った。
「毎日ケーキ食べれるの?。良いね。樋山くんち。」
「食べたいわけじゃないけど、習慣で出るんだ。もう麻痺してる。新田さんにも食べさせたいな。」
「恋、戻っても樋山んちには行くなよ。ケーキだったら買ってやるから。」
3人がそう話していた所で、また空気がさっと変わった。
と同時に、恋は美風が恋の後ろに回ったのと、宗介が恋の前に立ったのを感じた。
「気をつけろよ。」
モンスターはしばらく動かなかった。
と、突然、宗介に向かって、狼型の灰色のモンスターが、滑るように動いた。
恋が宗介を見ていると宗介はなぜか目を閉じていたので、恋は急激に焦った。
モンスターが鋭い爪のある手を振り上げたところで、宗介が目を開けなかったので、恋はとっさに前に出た。
「宗介!」
驚いたのは宗介だった。
宗介は毎度毎度上級魔法覚醒者として警備に駆り出されている身分で、今日は目をつぶっても弱いモンスターが倒せるか試していたのだった。
鉤爪は恋の肩を切り裂いた。
「恋!」
宗介はモンスターを睨んだ。
それだけやるとモンスターは魔法使いの宗介の剣幕に怯えて、あっという間に逃げ去った。
「こら!なんでお前が出てくるんだよ!」
血を流している恋に宗介が怒った。
「だ、だって宗介が」
「試してんの。雑魚目閉じて倒せるか。絶対倒せんの。失敗ありえないんだよ。」
「新田さん、魔法使えないのに、前出るの馬鹿だよ」
美風がきつい口調で咎めた。
「ったく。もう。馬鹿なんだから。良い?」
宗介が言葉を切った。
「僕も樋山も、もう一流の魔法覚醒者なの。僕たちの心配よりお前。お前だけ。」
宗介が言った。
「僕たちが守ろうとしてるのはお前なの。僕たちはいつもお前だけ怪我しなきゃいい位に思ってる。それをいい加減分かれよ。」
「その通り。大切に思ってるのを理解しなよ。」
「約束。絶対、僕の前に出ないこと。今後。あり得たら、僕がお前をただじゃ置かない。」
「……」
恋は、怖い顔の宗介に黙っていた。
「ああむかつく。さっきのモンスター、追いかけて仕留めていい?」
美風が聞いた。
「多分ビンタ1発かな。ううん2発、両頬かも。もしキミが僕らの前に出ることがあり得たら、その時は僕たちのせいでキミが痛い思いするからね?。新田さん。」
それでは本末転倒なのではないか……恋は美風に思ったが、怖かったので何も言えなかった。


