幼なじみは狐の子。〜黒白王子の三角関係が始動する〜




◆◇◆







 陶器の町と聞いていたのでどんな町かと思っていたら、次の町は露店の町だった。

 大通り沿いに、陶器ばかり並べた露店が、100も200もある。

 ローブを着た恋たちは駅から物珍しげにしながら通りを歩いていた。

 
「この町、雨の日はやってないんだって」


 美風が歩きながら言った。


「さっき店の人が話してた。特別な町なんだね。雨降りの日は全然違う景色になるんだろうね。」

「陶器のお祭りをしてる、と考えるといいのかも」



 恋が言った。



「珍しい壺とかお皿とか、沢山売ってる。模様はこの町の伝統の模様なのかな。」

「道が狭い。歩きにくい。ああ、イライラする。」


 宗介が苛立たしそうに言った。


「買わせようったってそうは行かない。どうせ帰りに恋がドジ踏んで全部割っちゃうんだから。皿も、壺も。確かに良い品ばっかりだけど。」

「歩けば良いっていう点からしたら楽じゃね?。ただ歩くだけだし。品物見ながらだから疲れないし。」

「まあ、確かにな。一本道だし。賑わっているとはいえ。」


 そこで宗介は声の調子を変えた。


「ところで恋?」

「なに?」

「お前魔法の位置探査レーダー持ったよな?」


 にこお、と脅す時の笑顔で、宗介が尋ねる。


「持ってるよ」

「今度はぐれたら、そのレーダーを使ってすぐ僕たちの場所を調べること。良い?。絶対に狐にはなるなよ。」

「狐になれる人間って、闇値で取引されてるって、会長から説明されたんだ。本当に危ないからって言われた。新田さん、気を付けなきゃ駄目だよ。」


 美風が説明した。


「売ったら高い?」

「売らないの。まったくもう。馬鹿な事言わないの。警戒心持てよ。本当に危ないんだから。」


 宗介が振り向いて続けた。


「最もこの一本道で、お前だとしても迷うとは思えない。はぐれるとも考えづらいし。今日は僥倖だな。」

「何にもないといいけど……」

「あるはずないよ。一本道で。」

「だよな。」

 
 美風と宗介が頷いて歩き出した所で、恋は見ていなかった段差に足をつまづけて転んだ。

 運が悪かった。

 恋は斜めに、陶器を広げている露店に倒れ込み、ガッシャーンと音がして陶器のいくつかが壊れた。


「こら」


 宗介が恋を睨み、戻ってきて店の人に謝った。

 
「すみません。弁償しますから」

 店の人は愛想良く応じたが、如才がなかった。

 店の人はそれまで何か用事があったらしい。

 
「弁償してくれなくてもいいんで、1時間ばかり店番をしてくれませんか。」

「えっ」

「お願いします。急な用事がありまして。ぜひ。」


 宗介が異世界人登録カードを見せると、店の人は店番を頼み、台帳を渡すと出ていってしまった。