「亡国のお話だね。」
本屋の一角。
広げられ絵本を見て、恋は紺色のローブの腕を返しながら言った。
3人は本の町へ来ていた。
売っているものといえば小説。
どこを見回しても本ばかり。
町は古く、物語しか売っていないせいで全体的にはちょっと不思議な雰囲気だった。
「面倒。歩けって、どういう意味なんだ?。ただ歩けば善の力が撒かれてる事になるのか?」
「そうだな。分からないけど、町を回れって言ってたから、一周はした方がいいんじゃないか?。その方が普通だと思うし。」
「恋行くぞ。油を売ってる場合じゃない。夕方までには帰らなきゃいけないんだから。」
ローブを羽織った3人は、まず町の入り口の門から始めて、順々に本屋の並びを回った。
しばらくして。
「疲れてきた」
恋が言った。
恋は、歩くのは好きだったが、どこにも寄らず無目的に歩くのは好きではなかった。
宗介と美風は、時折本屋を覗きながら、結構楽しそうに散歩していた。
「だらしない。もう疲れたって。情けないと思いなよ。」
「僕はまだ疲れてないけど、それならちょっと休もうか。見て、あっちの方にお洒落なカフェがある。」
