幼なじみは狐の子。〜黒白王子の三角関係が始動する〜







 恋と美風は屋上の縁まで来て、二人で街並みを眺めた。

 学校のグラウンドの向こうに民家の並び、その向こうに小さく人が歩いている商店街が見える。


「新田さんと上野が付き合いだして約半年経つ。僕が悔しかった期間を数えてるんだ。覚えてる?僕が告白した時のこと。」


 ふと美風が聞いた。



「え、えーっと」

「覚えてないんでしょう。あんまりぼけっとしてたら、君のこと嫌いになるってあの時言ったよ。天然。君は相変わらずぼけっとしてる。」



 それから聞いた。



「ねえ、新田さん、上野の何が好き?」

「何がっていうか……」

「幼なじみ。二人は。それでしょう?。まったく腹ただしい。」



 美風は塀を背中に寄りかかった。



「小さい頃からの知り合い、幼なじみっていうブランドの分だけ、僕が不利だ。いつも間に入る余地を探してる。そういう関係性ってそんなに大事だと思う?」

「いや……」

「ちゃんと考えて。子供だよ、そういうのに拘るの。君はどれだけ大切にされるかとか、どれだけ自分にとって有利かだけで考えた方が良い。もちろん、どれだけ真剣に想われてるかも含めてね。」



 美風はそこで言葉を切った。

 二人が無言になると、Bグループの残りの生徒達の話し声だけ風に乗って響いて聞こえた。

 恋の目をまっすぐ見つめて、美風は口を開いた。



「なんで僕じゃないの?」

「……。」

「僕は上野なんかより新田さんを大事にしてあげられるし、大事に思ってるよ。いつも新田さんのことだけ考えてる。言われたいこと言ってあげるし、されたいことしてあげるよ。」

「樋山くん……」

「約束するよ。どうして僕じゃないの?。言って、僕だって。」



 困り顔をした恋から目を逸らすと、美風はあっさり声の調子を変えた。



「ねえ、新田さん、今度、ショッピングモールに内緒でデートに行こうよ」

「えっ」

「二人で。お洒落して。考えなかった?。試しに僕と付き合ってみてくれても良いでしょう?。」

「それは……」



『行ったらどうなるか分かってる?。』

 恋の頭の中に、宗介の顔が現れて、大きくなった。


 頭を抱えた恋が言い淀んで居ると、美風は屋上の床を見つめた。
 ため息をつく。



「お試し位良いでしょう?。……君と上野が付き合い出したって聞いて、僕、ちょっと泣いた。」

「!亅



 恋は驚いた顔で美風を見た。

 宗介は滅多な事では泣かなかった。

 恋は、美風が泣くところが、一瞬、なぜか想像出来る様な気がした。



 黙っていた美風は口を開いて重々しく言った。



「デートしてくれなきゃ、また僕は泣くことになる。」

「……」

「新田さん、試しにでいいから、お願い。僕と付き合ってよ。」



 冷たい風が髪をさらって、青空へ戻っていった。