駅前のゲーセンは混んでいた。
賑やかな音楽が響き、近未来的なアーケードゲー厶の画面がきらきらしている。
入口には光る文字で英語の店名が描かれていて、入る時恋はその文字を読もうとしたが知らない言葉で何と書いてあるのか分からなかった。
「あっあれあれ!。」
理央が指した方を見ると、戦隊もののストラップやフィギアやぬいぐるみの入った、大きなクレーンゲームが置いてあった。
「こないだ取れなかった。今日こそは。絶対取ってやるから!。恋私行って来る!。」
理央は腕まくりをしてクレーンゲームに突進した。
「はあ……うるさ。」
「何からする?。新田さん。」
恋は、全然楽しくなさそうな宗介とそれなりに楽しそうな美風の間で、店の中をキョロキョロした。
恋は、ふと、理央のクレーンゲームの隣にあったゲームに目を留めた。
そのクレーンゲームは小さな動物のぬいぐるみのキーホルダーが商品で、大きさは理央のしているクレーンゲームよりずっと小さかった。
恋は、お金を支払うと、ぬいぐるみのクレーンゲームのボタンを押した。
恋は狐のぬいぐるみを狙ってクレーンを動かしたが、最初に引っ掛かったのはライオンのぬいぐるみだった。
恋は、今度はそのライオンを狙ってボタンを押したが、受け取り口に来る前に、ぬいぐるみは倒れて落っこちてしまった。
「下手くそ。」
恋が悔しがっていると、横で見ていた宗介が言った。
「貸して。」
宗介はゲームにお金を払うと、まず両手でゲームに体重をかけてボックスの中をよく見た。
「狐ね。」
宗介は1回目で狐の上にあったパンダを器用に除けると、2回目のゲームで、狐の首の部分にクレーンを動かして持ち上げて近くまで持ってきた。
2回目は受け取り口に来るまでに落としてしまったが、3回目に、さっきと同じ様にしてクレーンを動かし、ついに宗介は狐のぬいぐるみをゲットした。
「ありがとう!」
「はいはい。良かったね。大事にしなね。」
恋は受取口から取ったぬいぐるみを鞄に入れた。
「僕も取ってあげようか。狐のキーホルダー。」
美風がボックスを見ながら言った。
「一つでいいよ」
「取りやすそうなのがあるから、取ってあげるよ。僕もこういうの得意なんだ。見てて。」
美風はゲームにお金を支払うと、ボタンを押してクレーンを動かし始めた。
