幼なじみは狐の子。〜黒白王子の三角関係が始動する〜















 そしていよいよ体育祭当日。

 恋達生徒は、朝早くに登校して更衣室でジャージに着替えてから、グラウンドに椅子出しをするため、一旦教室に戻った。


 入場門の方には、先に椅子出しを終えていた男子達が集まっていた。

 恋は、持って来た椅子をクラスごとの定位置に並べると、入場門へ向かった。




 最初に全員整列しての選手宣誓があって、体育祭が始まった。

 一番始めの競技はダンスで、入場門から入っていった1年はグラウンドに等間隔に並んで今日のために練習したダンスを披露した。

 その次に徒競走があって、恋達は練習通り整列して50メートルを走った。



「ああ、面倒くさ」


 観客席ではちまきをした美風が椅子に座って俯いて言った。



「僕は今日が早く来て欲しかったんだ。早ければ早いほどすぐ終わるから。かったるい。最初っからやる気なんてない。」

「今日晴れてよかったね」



 立ち上がってやってきた理央が言った。



「もうすぐ樋山くんと上野くんが出るリレーだよ。応援するからね。」

「リレーは良いよ。走るだけだから。好きな方、走るのは。気分も上がるし。得意だしね。」

「問題は二人三脚。」



 近くに座っていたはちまきを付けた宗介が暗い顔で言った。



「練習で何回もこけた。多分今日もそうなるな。何が悲しくてグラウンドで醜態さらして。樋山のせいで。あーあ。」

「うざ。上野のせいの間違いだろ。お前が遅いんだよ。僕の足を引っ張って。」



 宗介と美風は足並みが揃わず二人の二人三脚は壊滅的と言われていた。
 二人ともやる気がなく先生が叱ってはっぱをかけても、時々立ち止まって歩いたりしていた。



「その代わりリレーは。うちのクラスが絶対勝つって言われてるよ。」


 理央が明るく言った。



「上野くんも樋山くんも頑張ってね。」

「リレーはね。」



 宗介が言った。


「走るだけだから良い。まったく何が楽しくて。ああ、だる。この世から二人三脚を消したい。歩調を合わせる気なんか最初からないし。恋、僕の応援しなよ。」


 恋ははちまきを巻き直しながら、うん、と頷いた。



 ブロック対抗のリレーが始まると、観客は大いに沸いた。

 宗介の走るのは恋のクラスの席の前だったので、恋は一番前に座って宗介の勇姿を見た。

 走者が走ってきて宗介の番になると、バトンを受け取った宗介は勢いよく走り出した。

 だんだん宗介が近づいてきて恋の目の前を走る時、恋は思わず立ち上がって応援した。





「宗介!」





「上野くんかっこいー!」

「かっこいー!惚れるー!」

「上野くん頑張れ!」



 恋と女の子達の大きな声援の中、宗介はあっという間にスパートをかけて見えなくなり、一人抜かして、次の走者にバトンを渡した。



 向こうの方を走る事になっていた美風の応援に回った後、恋は自分のクラスの席に戻ってきていた。

 後ろから肩を叩かれて振り向くと新聞部の伊鞠と桂香が居たので、恋はぎょっとして身を引いた。

 伊鞠と桂香はやはりカメラを持っていた。

 今日は新聞部は大活躍で、部員たちは全員カメラを持ってグラウンドをうろうろしていた。


「さっきリレーが終わったわね。上野くんと樋山くん、リレーも代表だったでしょう。」


 伊鞠がそう言ってから聞いた。



「特ダネ特ダネ。新田さん、あなたはずばりどっちを応援してる?」

「両方してますよ」



 恋が困り顔で言った。


「……伊鞠、リレーより三角関係」


 桂香が呟いた。



「その通り!。新田さん、あなたとあの1年のイケメン2名の交流を、写真を交えながら特集したいのよ。」

「困ります」

「あ」



 リレーからクラスの席に戻ってきていた宗介が気づいて作り笑顔をした。



「先輩。何か用ですか?」

「その通り。」



 伊鞠が口を開こうとする前に宗介が言った。


「僕達なら良いけど、恋に関する事だったら迷惑なんで。っていうか、3年のブロックに帰ってもらえません?。話す気ないし困るんで。」


 きっぱり言って帰らせようとする宗介に、伊鞠も負けずに言い返す。

 押し問答はしばらく続いた。


「そんな事より、もうすぐ二人三脚だけど。」


 伊鞠が言った。



「勝算は?。勝つためにやっている事はある?。」

「特にないです。僕に絡まないでもらえませんか。僕達に。樋山に聞いたら?。」



 宗介が怒り笑いをしてから、ハア、とため息をつくと、桂香が黙って宗介の写真をパシャリと一枚撮った。