安心してください、騎士団長様。わたし(雑草王女)との結婚は断固阻止してさしあげます!

「団長が、結婚を望んだんですか?」

「驚きますか? ずっと気持ちを隠すのは骨が折れましたよ。食堂でわたし以外の男と二人きりにならないよう、常に気を配りましたし、ほかの場所でもそうでした。わたし以外の男があなたと笑いあうのも、正直、気が狂いそうなほど不快だったことは一度や二度ではありません」
「まさか。そんな……」

「男の子のふりをしていても、あなたは魅力的なのですよ。ましてや皆、あなたが女性であると気づいていた。平静でなんかいられない。――それでも、あなたがそれを知ったらここからいなくなってしまうから。目が完治した時も消えてしまうと思ったから、一日も早く、あなたに求婚できる資格が欲しかったんだ」

 思いもかけない告白に、頭の奥が熱を持った気がした。
 夢みたいで、でもこの鼓動も熱も現実で。
 許しを請うように伸ばされたセドリックの手に、ライラはそっと触れた。

「私は王女としては価値がないです。能力も容姿も教養も。何一つ誇れるものはない」

「なぜ? わたしはあなたを魅力的だと言ったばかりです」

 心底不思議そうな顔をしたセドリックがライラの頭に手を伸ばし、黒いかつらを取ってしまう。
 その下から、かつらをかぶるために短くした金色の髪がさらっと零れ落ちた。

「目の色も、戻してもらえますか?」

 そう乞われ、ためらいつつもポケットから出した目薬を差すと、茶色の目が空色に戻る。

「黒髪と茶色の目もいいですが、やっぱりあなたにはその色が似合いますね」