安心してください、騎士団長様。わたし(雑草王女)との結婚は断固阻止してさしあげます!

 忘れてると思われていたなんて心外だと告げると、彼は小さく微笑み、遠くを見つめた。

「わたしはね、森で一角狼に囲まれ、泣きながらも棒を振り回して戦っていたあなたを、今でも鮮明に覚えています。時々騎士団の練習場を見に来ていたことにも気づいてましたよ」

 だから変装していたところですぐに気づいたのだと、彼は少しばつが悪そうに打ち明けた。いつもこっそりと顔を出す女の子が王女だと知ったのは、その後のことだったのだと。

「あなたの能力に気づいたのは偶然でした。でも、あなたの侍女を問い詰め、自分の考えが当たってたことを知りました。あなたがどうしてここに来たのかを知った時、私がどう思ったか分かりますか?」

 プルプル首を振ると、セドリックは申し訳なさそうな顔で微笑んだ。

「嬉しかったんですよ」
「嬉しかった?」

 まさか? という気持ちが顔に現れたらしい。
 彼はライラに言い含めるように、「そうです」と頷いた。

「目が、治るって分かったから?」
「それもないと言ったら嘘になる。でも一番は、いつのまにかわたしの心を占領していた女の子が、わたしのために力になってくれていることでした。傲慢な男でしょう」
「そんなこと……」

 セドリックの話がうまく頭に入ってこない。
 ただ、彼に傲慢という単語はあまりにも縁遠かった。

 セドリックとキャスリンは、ライラに内緒で協力をしていた。
 塔に王女がいるかのように振る舞い、時には影武者になってくれたキャスリンを守るよう、バーナビーに命じたのはセドリック。クインがライラ王女であることは、団の間では公然の秘密だった。

「王から褒美をと言われ、やっとここまで来たと思いました。堂々と王女を妻にと望めない立場だったわたしが、そう言えるようになったのですよ」