推しが壁から出てきたので共に暮らします!

六月中旬。
仕事終わりに高瀬くんと合流し、ラーメン屋へ向かう。

「自分で作る飯も美味いけど、人が作るのはやっぱ最高だよな」

味玉を割りながら嬉しそうに言う彼を見て、「まだ三ヶ月か」と高瀬くんが呟く。

「まだ三ヶ月しか経ってないのに、青葉でのことが何年も前のことみたいだ。アイツらに会いてえな」

聞こえないくらいの声で彼が零したのを、私は聞き逃さなかった。

翌日には、彼の希望で美容院へ。
高瀬くんが「暑いから前髪邪魔」と髪を切ったら、なんと六ミリの坊主姿になってしまった。
「推しの御髪があぁー……っ!」とその場でしゃがみこむ私を見て、高瀬くんが私の腕を掴んだ。

「夢乃はこれ、嫌?」
「嫌じゃない! むしろなんでも似合ってすごい! 尊い!」
「夢乃にガッカリされるんじゃないかって思ってたから。夢乃がいいならこれでいい」

そんなキラーワードを吐かれ、坊主姿もいい……なんて思っていた翌朝、彼の髪は元通りの長い焦げ茶色に戻っていた。キャラデザは作者様以外変えられない。次元の壁とは不思議なものだ。