高瀬くんへの恋心に気がついてしまってから数日後の会社帰り。
仕事で初歩的なミスをしてしまい、落ち込む私を元気づけようと、高瀬くんが会社の前まで迎えに来てくれた。
その帰り道、夜の街道を歩きながら、私は初めて過去のトラウマ──ゲーム業界にいたときのことを彼に打ち明けた。
「ホントはね、夢を見たい自分もいるの。高校の頃からずっと憧れてたゲーム業界に未練もある。ただ、夢を追って今の生活を失うのが怖いの」
「……そっか」
高瀬くんは否定も肯定もしなかった。その相槌が心地よくて、うっかり泣き言を言ってしまう。
「普通でいようって、意識しはじめたのはそれからかな。後輩にはつまらないって言われて、仕事ではミスして。情けないよね……」
「『普通』で生きられることがすげえんじゃねえの?」
「え?」
「俺、野球しかねえから。こっちに来て、なにするにも金ってかかるんだなとか痛感した。それをさ、全部一人でやっている松崎さんは、それだけですごいと思う」
推しにそんな風に言ってもらえるなんて、思ってもみなかった。私は口をあんぐりと開けて彼に尋ねる。
「高瀬くんはどうしてそんなに頑張れるの?」
「野球が好きだから」
形のいい目を細めて、彼は心から笑った。
「好きだから、やらずにはいられねえんだ。好きなもので、日本一になりてえ。そのためなら、何だってできる」
夜なのに、彼の瞳がきらきらと光を反射する。
その背中を追いかけながら、私は心の中で固く固く決意した。
(高瀬くん。私も、あなたの夢を叶えるためなら――何だってできるよ)
仕事で初歩的なミスをしてしまい、落ち込む私を元気づけようと、高瀬くんが会社の前まで迎えに来てくれた。
その帰り道、夜の街道を歩きながら、私は初めて過去のトラウマ──ゲーム業界にいたときのことを彼に打ち明けた。
「ホントはね、夢を見たい自分もいるの。高校の頃からずっと憧れてたゲーム業界に未練もある。ただ、夢を追って今の生活を失うのが怖いの」
「……そっか」
高瀬くんは否定も肯定もしなかった。その相槌が心地よくて、うっかり泣き言を言ってしまう。
「普通でいようって、意識しはじめたのはそれからかな。後輩にはつまらないって言われて、仕事ではミスして。情けないよね……」
「『普通』で生きられることがすげえんじゃねえの?」
「え?」
「俺、野球しかねえから。こっちに来て、なにするにも金ってかかるんだなとか痛感した。それをさ、全部一人でやっている松崎さんは、それだけですごいと思う」
推しにそんな風に言ってもらえるなんて、思ってもみなかった。私は口をあんぐりと開けて彼に尋ねる。
「高瀬くんはどうしてそんなに頑張れるの?」
「野球が好きだから」
形のいい目を細めて、彼は心から笑った。
「好きだから、やらずにはいられねえんだ。好きなもので、日本一になりてえ。そのためなら、何だってできる」
夜なのに、彼の瞳がきらきらと光を反射する。
その背中を追いかけながら、私は心の中で固く固く決意した。
(高瀬くん。私も、あなたの夢を叶えるためなら――何だってできるよ)
