推しが壁から出てきたので共に暮らします!

彼を元気づけたくて、翌日の夜、私は彼の好物である「じっちゃんの芋煮」を作った。
老人のカツラを被り、メイクでシワを描いて、高瀬くんの「じっちゃん」のコスプレをして。

「今日は直人の好きな芋煮じゃぞうー!」
「やべえ! 誰だよそれ! 発想が斜め上すぎんだろ!」

そんな私の姿に、高瀬くんはお腹を抱えて爆笑する。
ひーひーと笑い転げて、顔を上げた彼の目元に、一筋の涙が伝っているのが見えた。

「あれ、なんで泣いてんだろ俺……松崎さんが面白すぎるからかな」
「高瀬くん……」

芋煮を食べながら、彼はじっちゃんとの大切な思い出を語ってくれた。
「ショートは守備の花形だ!」と熱弁してくれたこと。野球を始めるきっかけをくれたこと。

「会いてえな……じっちゃん」

寂しげに目を細める高瀬くん。……の前に、
「ずず……ずず……」とものすごい勢いで号泣しながら味噌汁をすする私の姿。

「って松崎さん、なんで俺より泣いてんの!? おかげで涙引っ込んだわ」

原作通りのくしゃっとした笑顔が戻る。
私はそれにほっとして、またじっちゃんの姿で微笑むのだった。