翌日。バッティングセンターからの帰り道、夏に変わっていく街並みを、私は憂いながら、夏が好きな高瀬くんはうきうきしながら会話をする。
一駅分は歩いただろうか。以前の私だったら夏バテしていただろうが、高瀬くんと過ごしたおかげで幾分か体力がついたようだ。
「ここ」
高瀬くんが足を止めたのは木の色をしたお店で。カフェか何かだろうか? と思って重い扉を開けると、テーブルの上には様々な小物が飾られていた。
「わあ、可愛い……」
アンティーク調の雑貨店だろうか。夢乃が店内をうっとり眺めている間、高瀬くんは店主に話しかける。
「すみません、以前頼んでいたものなんですけど」
「高瀬様ですね。お待ちしておりました」
軽く礼をした店主がなにかを運んでくる。そこには店主の手作りだという、可愛らしいお花が付けられたピンク色のミサンガが一つ。そしてそれとお揃いの、青色のものが一つ。
「こちらでお間違いないでしょうか」
「はい」
「お包みいたしますか?」
「お願いします」
白髪混じりの老店主が柔らかく笑った。痩せているのにぷっくりした頬を存分に高く上げて、
「お二人の願いが叶いますように」と高瀬くんの手に包みを乗せる。
高瀬くんが深々とお辞儀をした。つられて夢乃も腰を深く折る。店を出てから、高瀬くんが包みを夢乃に渡した。
「これ、プレゼント。っていっても元を正せば夢乃のお金だけど」
「ミサンガだよね。にしてはすごく凝ってる……ありがとう。可愛い」
包みを開けた私は感動して手の中のものを見る。
「で、こっちが俺の」
「ええ、これ高瀬くんのなの? お花ついてるよ?」
「俺もそれはツッコミたかったけど、やっぱお揃いのがいいかなって思って。……笑うなよ」
「ううん、可愛いよ」
私は高瀬くんの制止も聞かず少しだけ口を緩める。そして、そういえばと思い立ったように彼に問うた。
「ミサンガって、願い事するんだよね? 何願うの? 甲子園優勝?」
「んー、それは願わなくても叶えるからな」
「さすがです」
「じゃあ俺は、夢乃の夢が叶いますように」
「私の夢? それさっきのと一緒だよ?」
「違ぇよ」
高瀬くんが目を細めた。どういう意味? と何度聞き返しても彼は微笑むだけで、何も答えてはくれなかった。
「ブレスレットもそうだけど、こういうのって自分でつけるの難しいよね」
紐を結ぼうとすると上手くいかない。私が苦戦していると、高瀬くんに声をかけられた。
「夢乃、こっち向いて」
「なに?」
パシャ、と写真を撮られる。いつの間にか彼はチェキカメラを構えていた。
「どうしたのいきなり」
「や、夢乃だけの写真って一枚もなかったからさ」
「確かにそうだけど、もっとタイミングあるでしょ? 変な顔してない?」
「してないしてない」
そういいつつ彼は現像されたチェキを一向に見せてくれない。
「見せてったら」
「やだね」
「ひどい!」
「夢乃だって俺のグッズ部屋中に飾ってんじゃん」
「あれは公式が何度も校正を重ねた尊いものだからいいの!」
夢乃が早口で紡ぐと、高瀬くんがぷはっと吹き出した。
「久しぶりに聞いた、夢乃のヲタクトーク」
「もう、またそうやってはぐらかす……」
出会った頃のことを懐かしみながら、夢乃はチェキを見ようと奮闘したのだった。
一駅分は歩いただろうか。以前の私だったら夏バテしていただろうが、高瀬くんと過ごしたおかげで幾分か体力がついたようだ。
「ここ」
高瀬くんが足を止めたのは木の色をしたお店で。カフェか何かだろうか? と思って重い扉を開けると、テーブルの上には様々な小物が飾られていた。
「わあ、可愛い……」
アンティーク調の雑貨店だろうか。夢乃が店内をうっとり眺めている間、高瀬くんは店主に話しかける。
「すみません、以前頼んでいたものなんですけど」
「高瀬様ですね。お待ちしておりました」
軽く礼をした店主がなにかを運んでくる。そこには店主の手作りだという、可愛らしいお花が付けられたピンク色のミサンガが一つ。そしてそれとお揃いの、青色のものが一つ。
「こちらでお間違いないでしょうか」
「はい」
「お包みいたしますか?」
「お願いします」
白髪混じりの老店主が柔らかく笑った。痩せているのにぷっくりした頬を存分に高く上げて、
「お二人の願いが叶いますように」と高瀬くんの手に包みを乗せる。
高瀬くんが深々とお辞儀をした。つられて夢乃も腰を深く折る。店を出てから、高瀬くんが包みを夢乃に渡した。
「これ、プレゼント。っていっても元を正せば夢乃のお金だけど」
「ミサンガだよね。にしてはすごく凝ってる……ありがとう。可愛い」
包みを開けた私は感動して手の中のものを見る。
「で、こっちが俺の」
「ええ、これ高瀬くんのなの? お花ついてるよ?」
「俺もそれはツッコミたかったけど、やっぱお揃いのがいいかなって思って。……笑うなよ」
「ううん、可愛いよ」
私は高瀬くんの制止も聞かず少しだけ口を緩める。そして、そういえばと思い立ったように彼に問うた。
「ミサンガって、願い事するんだよね? 何願うの? 甲子園優勝?」
「んー、それは願わなくても叶えるからな」
「さすがです」
「じゃあ俺は、夢乃の夢が叶いますように」
「私の夢? それさっきのと一緒だよ?」
「違ぇよ」
高瀬くんが目を細めた。どういう意味? と何度聞き返しても彼は微笑むだけで、何も答えてはくれなかった。
「ブレスレットもそうだけど、こういうのって自分でつけるの難しいよね」
紐を結ぼうとすると上手くいかない。私が苦戦していると、高瀬くんに声をかけられた。
「夢乃、こっち向いて」
「なに?」
パシャ、と写真を撮られる。いつの間にか彼はチェキカメラを構えていた。
「どうしたのいきなり」
「や、夢乃だけの写真って一枚もなかったからさ」
「確かにそうだけど、もっとタイミングあるでしょ? 変な顔してない?」
「してないしてない」
そういいつつ彼は現像されたチェキを一向に見せてくれない。
「見せてったら」
「やだね」
「ひどい!」
「夢乃だって俺のグッズ部屋中に飾ってんじゃん」
「あれは公式が何度も校正を重ねた尊いものだからいいの!」
夢乃が早口で紡ぐと、高瀬くんがぷはっと吹き出した。
「久しぶりに聞いた、夢乃のヲタクトーク」
「もう、またそうやってはぐらかす……」
出会った頃のことを懐かしみながら、夢乃はチェキを見ようと奮闘したのだった。
