「大丈夫?」


そう、声をかけられるまでは。


「え……?」


驚いて顔を上げる。


そこにいたのは、さらさらの黒髪に紫とブルーがまじりあったような瞳。


かっこ、いい……。


「……何かあった?」


少し考えるとそう口にした彼。


「……彼氏に…捨てられました…っ」


「へぇ、そうなんだ。なら拾ってあげる」


拾ってあげる……?あ、また……


なに…初対面の人に騙されそうになってるの、私……。


彼があまりにも軽くそういうもんだから思わず乗せられそうになっちゃったけど……


「不審者…っ」


そういって立ち去ろうとすると目の前から自転車……


「…っと、大丈夫?子猫ちゃん?」


肩をぐいっと引っ張られて抱きとめられる。


子猫ちゃん、って……。


不覚にも助けられてしまった……。


「貸しできちゃったね」


この時頷いてしまったのは彼があまりにも甘い瞳をしていたから、でした。