「あのさ、いきなりだけど、付き合ってくれないか?」
「え、どこに?」
今度はどこに連れていってくれるのだろうと胸が高まった。でも、守谷さんは困ったように頬を掻く。
「そうじゃなくて、交際のほうの付き合うだ」
「こうさい? え、あの、交際!?」
びっくりして聞き返したら、守谷さんは大真面目にうなずいた。
一瞬ときめいたけれど、すぐ私は硬い表情になる。
彼女がいる癖になにを言い出すのかと不快になったのだ。
いくら魅力的でも不誠実な人は嫌いだ。
惹かれていたからこそ、そんなことを言われて、がっかりした。
私の態度を見て、守谷さんは弁解するように言った。
「ごめん。いきなりすぎたよな。でも、昨日から君のことが頭を離れなくて、今日一日一緒にいて、思ったんだ。これっきりにしたくないって。それに、君は七月からスペインにいくだろう? だから、早く捕まえとかないとって焦った」
恋人がいる人でなければ、そんなことを言われたらうれしくて舞い上がっていただろう。
だけど、守谷さんは二股をかけようとしているのだ。
(どうせ研修に行くから、あと腐れなく遊べると思ったのかな?)
むっとして、尖った声で私は答えた。
「……私には割り切った関係はムリです」
「割り切った? 研修のことを言ってるのか? 一週間集中講義をするだけだ。公私の区別はつけられるよ」
守谷さんがとんちんかんな答えをしてくるから、私は首を横に振った。
「違います。私は他に相手がいる人とは付き合えません」
「相手?」
「美奈子さんがいるでしょう?」
きょとんとしている守谷さんに憤慨する。たまたま名前まで知ってしまった人に申し訳ないと思って。
それなのに、彼は急に笑い始めた。
「ハハハハ、なるほど、美奈子か」
なにがおかしいのかとふてくされて見ていると、守谷さんは私のあごに手をかけ、顔を覗き込んできた。
「え、どこに?」
今度はどこに連れていってくれるのだろうと胸が高まった。でも、守谷さんは困ったように頬を掻く。
「そうじゃなくて、交際のほうの付き合うだ」
「こうさい? え、あの、交際!?」
びっくりして聞き返したら、守谷さんは大真面目にうなずいた。
一瞬ときめいたけれど、すぐ私は硬い表情になる。
彼女がいる癖になにを言い出すのかと不快になったのだ。
いくら魅力的でも不誠実な人は嫌いだ。
惹かれていたからこそ、そんなことを言われて、がっかりした。
私の態度を見て、守谷さんは弁解するように言った。
「ごめん。いきなりすぎたよな。でも、昨日から君のことが頭を離れなくて、今日一日一緒にいて、思ったんだ。これっきりにしたくないって。それに、君は七月からスペインにいくだろう? だから、早く捕まえとかないとって焦った」
恋人がいる人でなければ、そんなことを言われたらうれしくて舞い上がっていただろう。
だけど、守谷さんは二股をかけようとしているのだ。
(どうせ研修に行くから、あと腐れなく遊べると思ったのかな?)
むっとして、尖った声で私は答えた。
「……私には割り切った関係はムリです」
「割り切った? 研修のことを言ってるのか? 一週間集中講義をするだけだ。公私の区別はつけられるよ」
守谷さんがとんちんかんな答えをしてくるから、私は首を横に振った。
「違います。私は他に相手がいる人とは付き合えません」
「相手?」
「美奈子さんがいるでしょう?」
きょとんとしている守谷さんに憤慨する。たまたま名前まで知ってしまった人に申し訳ないと思って。
それなのに、彼は急に笑い始めた。
「ハハハハ、なるほど、美奈子か」
なにがおかしいのかとふてくされて見ていると、守谷さんは私のあごに手をかけ、顔を覗き込んできた。



