バンドH


「はい、みんな、バレンタイン」
「アタシ、ありがとう」

今日は日曜日なので学校は休みで、
ある河川敷に集合していた

「今日15日だけどな」
アスカが言う
「追いかける」
「追いかける?」
ドラムアスカがバラエティパックを手に取り上部を引っ張る
「いい、みんな。2月15日。アタシから3人へのチョコ、これは"追いかける"の誓いだと理解して」
アスカがホワイトチョコのパームロールを口に放り投げた
「うまい」




「ねえ、アタシ。"追いかける"ってなに?夢とか」
「ええ、そう。夢チョコね」
ヒトミが板チョコをスライドさせて銀包みを剥き出しにした
「へえ。だから、1日スライドさせたってことか。追いかけるね。ふむふむ。好きってことじゃないの?」
「好きよ。メンバーだもの。でも、今はみんなで志を共有したいから。夢のバレンタイン」
「そうなのか。15日だもんね。スライドバレンタインだ。僕この板チョコ大好き」
ベースヒトミが端の三つのブロックを折って、チョコが銀紙から顔を覗かせる
「おいしー」
「ヒトミ、食べながらでいいから一回練習しよう。アスカとユキも」




「アタシ、ヴィジュアル系やるの?」
ユキがチョコクロワッサンの包装を破く
「うん。そう、ヴィジュアルロックの方向性で考えてる」
「結構、昔じゃない。僕たちが生まれる前でしょ。流行ったのって」
アタシが水上を這うボートを瞳で追いかける
「2回目の波が来る。必ず時代は巡る。それだけよ。先頭を走る。それだけ。それに」
「それに」
「楽しいわよ、きっと」
2隻目のボートが4人を通り越した



「うう、」
「どうしたの、ユキ。なんで泣いてるの。チョコおいしい?」
「僕、下手クソだから。練習してもなかなか上手にならないし。不安だし」
「みんな一緒よ。でも、諦めなければ絶対に上手になるから。実感がなくても絶対に上手になってるから」
「うん、うん」
「このバンドのギターはユキ。あなたしかいないのだから。どんなに上達しなくてもみんな、"待ってる"から」
「待ってる」
ユキが笑う
いつか、紅一点のアタシが迷い悩んだなら、3月13日にホワイトチョコを差し出してあげよう
僕たちはいつでも待っている
手を取ってあげるから、必ず





「みんな練習してきた?ユキ」
「BELOVEDのサビ。できるようにならなかった」
「うん、わかった。ヒトミ」
「メリッサと天体観測。下手過ぎてやんなっちゃうよ」
「うん。いいわ。記録残しとかないといけないから」
「アスカ」
「俺は別メニューだ」
「なによ。それ」
「腰、痛い」
「ジジィみたいなこと言ってるわね」
「ああ、そうだ。自由にさせてくれ」
「いいわ。ギターとベースは課題制ね。ユキ」
「うん、僕はジュディマリの Radio練習するよ」
「そうね、お願い。ヒトミ」
「教本通り進めるよ。マキシマムザホルモンのぶっ生き返すと、GO!GO!7188のこいのうた」
「はい、じゃあまた来月15日ね」
はい
如月の中旬でも、春の陽気だった
15時を過ぎて少し肌寒くなっていた
「そろそろ帰ろうか」
アタシの口にはエリーゼが咥えられていた
「ああ、そうだな。帰るか。アタシは何で来たんだ」
「チャリ」
アスカが右手で腰を摩りながら、左手にはルマンドをつまんでいた
ぼんやりスティックに見えて目をこする
「ガールズロックもやるのか」
「うん、そうね。とにかく低く歌う練習してみる」
「低く」
「そう、そうね」
じゃあ、帰ろうか
うん、アタシが自転車に乗り込んで、男子3人が見送る
じゃあね











ハミルさん
おはようございます

おはよう、おはよう

一応、場所だけ決めておきました

よかろう、よかろう
ルミヤくん



いつの日か、ここでやるのです

らじゃ、らじゃ、ぶらじゃー!

ちょっと、ハミルさん
元気ですね、寝起きだからですか
私ちょっと下ネタは・・

はあ、よく寝た

シングルベッドで寝ないでくださいね

すいません
ベッドなんて使っちゃって

そっちではないです

ああ

名星権が与えられるようです

ほうほう



発見者ですか、発見星者ですかね

ええ、星
やっぱり河川敷がよろしいのでは

でもですよ、ルミヤくん
関東でしょう

ハミルさん
わかってらっしゃる
見えないんです

第1候補仮でいいんではないですか

はい

いい山ありますよ

ハミルさん

いい海ありますよ

いいですね

アイスランドとか

オーロラですか

でも、ですよ、ルミヤくん

そうですね、きっと
そういうところなんですかね

アラスカとか

ええ、ええ
島とか

だってだってですよ!

どうしました、ハミルさん
夢でも見てたんですか

普通に考えたら、新星を見つけることなんかできないですよ!

ハミルさん・・
熱くなってきましたね

普通に考えたら

関東じゃ無理です
日本じゃ無理でしょう?

肉眼でも!満天の星空が輝きまくり
闇を星のみが埋め尽くすような
この世にあり得ないような!信じられない
スターが私たちを!殺す

まあ。まあ。いいですよ、ハミルさん
これ十五ヤから





夢ショッテいきましょうよ