マジックアワー

  「成瀬さん、下の名前は?」
  「瞬」
  「おいくつですか?」
  「32」
  「32!?」
  「見えないでしょ。めっちゃ言われる。悠ちゃんは?」
  「27です」
  「27?やっぱ俺のこと成瀬さんって呼べ」
  「え、もっと上だと思ったんですか」
  「あ、ごめんごめん、違う。待って」
  「で、成瀬はさ〜」
  「あのなぁ」
  「お仕事は何してるんですか?」
  「俺?医者」
  「医者!?」
  「見えない?」
  「見えない」
  私が言うと、成瀬があはは、って笑う。
  「それもよく言われる」
  髪明るいし。なんか、チャラいし。
  「でも多分、みんなが想像する医者じゃないよ。決まった病院に属さず、非常勤で必要な時だけ働いてるの。根無し草」
  「根無し草?」
  「要するに、自由ってこと!」
  成瀬が笑顔で人差し指をピン!って立てて、ガハハって笑う。
  「そうか、自由かぁ!」
  私も成瀬に合わせてあっけらかんと言うと、成瀬は楽しそうに笑った。