マジックアワー

  良い考え方をする人だなあと思った。物事の良い面を見つけられる人、私は好きだ。チャラい人だと思ってたけど、ちゃんと中身のある人っぽい。
  「もし、このままドアが開かなかったらどうします?」
  彼が突然私を見て言う。
  「えっ?」
  「もしもの話。このドアがもう一生開かなくて、外に出れないってなったら、何を一番最初に後悔しますか?」
  「え」
  あなたは?って聞こうと思って、まだ名前を知らないことに気づいた。私が彼を手で示すと
  「成瀬でいいよ」
  と、彼——成瀬さんは笑った。
  「あ、三浦です。三浦悠(はるか)です」
  ぺこりとする。
  「そっか」成瀬が笑う。「大人になってからあんまこういう自己紹介することないね」