電車はまだ動く気配がない。
車両と車両の間のドアががらがら、と開くと、車掌らしき人が私たちの車両に入ってきた。私たちを見るなり、申し訳なさそうに、頭をぺこりと下げ、
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。この車両はまだ動く見込みが立っておりません。2時間あればまた動くとは思うのですが……」
と言った。白い手袋をはめた手を、胸の前でぎゅっと握りしめる。怒鳴られると思ったんだろうか。
「2時間かあ……」
呟いたのは、前に座るの男性だった。
「はい……そこで、車両のドアを開放するので、ご希望の方は、職員の案内の下、ここで降りていただくこともできます」
「なるほど」
男性が、スマホを見る。
「どうされますか?」
車掌が聞く。
「うーん」
と男性が少し考え込む仕草をする。
「まぁ、とりあえずいいです」
「私も」
どうせここで降りたところで、家まで歩いて帰るわけにはいかないし、タクシーは高いし。余計な出費は抑えようと思った。
「かしこまりました。また何かあればおっしゃってください」
車掌はそう言うと、隣の車両に移って行った。
車両と車両の間のドアががらがら、と開くと、車掌らしき人が私たちの車両に入ってきた。私たちを見るなり、申し訳なさそうに、頭をぺこりと下げ、
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。この車両はまだ動く見込みが立っておりません。2時間あればまた動くとは思うのですが……」
と言った。白い手袋をはめた手を、胸の前でぎゅっと握りしめる。怒鳴られると思ったんだろうか。
「2時間かあ……」
呟いたのは、前に座るの男性だった。
「はい……そこで、車両のドアを開放するので、ご希望の方は、職員の案内の下、ここで降りていただくこともできます」
「なるほど」
男性が、スマホを見る。
「どうされますか?」
車掌が聞く。
「うーん」
と男性が少し考え込む仕草をする。
「まぁ、とりあえずいいです」
「私も」
どうせここで降りたところで、家まで歩いて帰るわけにはいかないし、タクシーは高いし。余計な出費は抑えようと思った。
「かしこまりました。また何かあればおっしゃってください」
車掌はそう言うと、隣の車両に移って行った。



