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それから数年後、瞬が研修医2年目、25歳になっていた。
まもなく、瞬の研修医期間が終わり、父親の病院で働き始めようという頃。沙耶は妊娠し成瀬病院に入院することになった。
沙耶の母親は、孫の顔を見ることはなく亡くなってしまった。
病室で瞬は、沙耶の夫である須藤と話していた。なんだか瞬は、須藤と話しているとイライラする。次第にその理由が分かった。文句が多い。なんというか、品がない。知性を感じない。あと、無意識のうちに沙耶のことを見下す発言をする。こいつが家で沙耶を抱いている……腹の中で舌打ちをする。
腹が立つと同時に、瞬の頭には疑念があった。隆志の中身の空虚さを、沙耶が見抜けないはずがないと思った。
そしてついに隆は沙耶を見下し、蔑ろにする発言をした。
「あいつ、身寄りがいないから俺が拾ってやったんだ。父親がいないからろくに愛することも知らない」
もう、限界だった。
「お前に沙耶の何がわかるっ」
次の瞬間、瞬は隆志を殴っていた。瞬の手には血がつき、隆志の口は血まみれだった。
「うわぁっ」
隆志は自分の口を手で触り、血がついているのを見ると涙目になった。すっかり瞬に怯えている。
瞬は隆志の胸ぐらを掴む。
「おいてめえ、歯が折れたくらいで泣いてんじゃねえよ」
「ちょっと」
側にいた看護師の須藤が間に入り止めようとするが瞬は隆志を掴む手を離さなかった。そして続けた。
「沙耶の傷はそんなもんじゃない」
須藤はこれを聞いて、それもそうか、と思い手を放した。
「今よくわかったよ。沙耶は自分を人質にして、母親を救おうとしたんだ。その尊さがお前にはわかんねえのか。それが愛じゃなかったらなんなんだ。お前は、自分の夢や人生を犠牲にしてまで誰かを守りたいって思ったことがあんのかよ!」
瞬の目には涙が溜まっていた。
「もし沙耶を幸せにするつもりがないのなら、俺がもらう。金だって返す。なんでもやるよ」
瞬はそう言うと、ようやくその手を離した。
それから数年後、瞬が研修医2年目、25歳になっていた。
まもなく、瞬の研修医期間が終わり、父親の病院で働き始めようという頃。沙耶は妊娠し成瀬病院に入院することになった。
沙耶の母親は、孫の顔を見ることはなく亡くなってしまった。
病室で瞬は、沙耶の夫である須藤と話していた。なんだか瞬は、須藤と話しているとイライラする。次第にその理由が分かった。文句が多い。なんというか、品がない。知性を感じない。あと、無意識のうちに沙耶のことを見下す発言をする。こいつが家で沙耶を抱いている……腹の中で舌打ちをする。
腹が立つと同時に、瞬の頭には疑念があった。隆志の中身の空虚さを、沙耶が見抜けないはずがないと思った。
そしてついに隆は沙耶を見下し、蔑ろにする発言をした。
「あいつ、身寄りがいないから俺が拾ってやったんだ。父親がいないからろくに愛することも知らない」
もう、限界だった。
「お前に沙耶の何がわかるっ」
次の瞬間、瞬は隆志を殴っていた。瞬の手には血がつき、隆志の口は血まみれだった。
「うわぁっ」
隆志は自分の口を手で触り、血がついているのを見ると涙目になった。すっかり瞬に怯えている。
瞬は隆志の胸ぐらを掴む。
「おいてめえ、歯が折れたくらいで泣いてんじゃねえよ」
「ちょっと」
側にいた看護師の須藤が間に入り止めようとするが瞬は隆志を掴む手を離さなかった。そして続けた。
「沙耶の傷はそんなもんじゃない」
須藤はこれを聞いて、それもそうか、と思い手を放した。
「今よくわかったよ。沙耶は自分を人質にして、母親を救おうとしたんだ。その尊さがお前にはわかんねえのか。それが愛じゃなかったらなんなんだ。お前は、自分の夢や人生を犠牲にしてまで誰かを守りたいって思ったことがあんのかよ!」
瞬の目には涙が溜まっていた。
「もし沙耶を幸せにするつもりがないのなら、俺がもらう。金だって返す。なんでもやるよ」
瞬はそう言うと、ようやくその手を離した。



