マジックアワー

  コンコン、と病室のドアをノックすると、沙耶が振り向いた。沙耶は瞬を見るなり、顔をハッとさせる。
  瞬が沙耶の隣に腰掛ける。沙耶は何も言わない。
  「よかったなぁ」
  瞬が呟くと、沙耶が瞬の方を向いた。
  「え……?」
  瞬も、沙耶の方を向く。
  「結婚おめでとう。やっぱり、神様っているんだなって思った」
  沙耶の大きな目が瞬を見つめる。
  「沙耶めっちゃ頑張ってたもんね。世界は、やっぱり最後は報われるようになってるんだ」
  天は沙耶を見放さなかった。瞬は普段神様を信じるたちではなかったけど、この時ばかりはその存在に感謝した。そして、沙耶の幸せを心から祝福した。
  沙耶の瞳から、一筋の涙が溢れたのを、瞬は見た。
  「え……、なんで泣いてるの」
  「ううん、ごめん」
  沙耶が手の甲で涙を拭う。
  「本当は、直接言おうと思ってたんだけどね。直接言えなくてごめんね」
  「ううん」
  「瞬くん、最近病院にいなかったけど、何してたの?」
  「え?あぁ……ちょっと大学忙しくて」
  「そっか」
  「うん」