マジックアワー

  「母子家庭で、うちの病院にお母さんが入院してて、その費用が必要でその子大学辞めて働いてんの」
  美優の、瞬を見る目つきが変わったのを瞬は感じた。瞬はそれはそれでむず痒くて、なんだか居心地が悪くなって、やっぱりこの話はさっさと切り上げよう、と思った。
  「俺はその子のことが好きなの、だからなんとかしてやりたいの!」
  美優が「へぇ〜ふーん」って瞬の顔を覗き込む。
  「なんだよ」
  「いくら?」
  「来月までに80万」
  「それは無理だな」
  美優が腕を組む。
  「だよねぇ」
  瞬は頭をもたげる。
  「ひとりだったら無理だけど、ふたり分ならワンチャン行けるかも」
  瞬がガバッと顔をあげて、美優を見る。
  「美優の分の給料、あげるんじゃないよ、借すんだよ」
  瞬の顔がパァァっと明るくなる。
  「ありがとう!!」
  瞬が美優の手を取りブンブン振る。
  「利子とるよ」
  「ありがとうぅ〜」
  瞬は半ば泣きそうになりながら美優をガバッと抱きしめた。
  「酒くさい。離して」
  「あ、ごめん」
  翌月、給料日。瞬は2人分の給料を握りしめて、病院に駆け込んだ。