マジックアワー

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  卓につく美優と瞬。2人で、キャバ嬢とおじさんの卓につく。
  「じゃあこのワイン全部いけるか?」
  と、おっさんが半分以上残ったワインのボトルを指す。美優が、あ、って顔をする。阻止すべく適当な言い訳を考えているようだった。瞬はそれには構わず「いけます」と即答した。美優が、アホかこいつ、って顔をする。瞬はそれを直瓶で一気に飲み干した。美優が、やれやれ、と額に手を当てた。
  おえ、体調わるっ。吐きそう。
  それを察した美優が
  「瞬、ごめん、おしぼり取ってきてくれる?」
  って助け舟を出す。
  「わかりました」
  瞬が「失礼します」と言って席を離れる。まじでありがとう、と言う視線を美優に送ると、美優は、早く行け、と言わんばかりに顎をくいってしゃくった。かっこよ。ほんとにコイツ、神。
  瞬はバックグラウンドに逃げ込み、しゃがみこむ。少ししてから美優が来た。瞬に水を渡す。
  「ありがとう」
  瞬が500mlの水を一気に飲み干す。
  「あんな量飲んだら死んじまうわ、あのジジイ俺を殺す気か」
  「あんなのいちいち本当に相手にしなきゃいいんだよ。上手くやんないと。そんな無理しなくていいのにさぁ」
  美優が瞬の隣に屈む。
  「なんでそんなに無茶すんの?なんのため?」
  「まあ、ちょっとお金が必要になって……」
  美優がうわぁ、コイツ何したんだ、って顔で瞬を見る。
  「は?お前が何を想像してるか知らんが別に悪いことしてねえよ」
  「じゃあなんで?プロポーズでもするの?」
  「プロポーズ……?」
  冗談で言ったのに、満更でもなさそうに自分を見つめる瞬を見て、美優が眉を顰める。
  「プロポーズじゃないんだけどさ……」瞬がぽりぽりと首の後ろを掻く。「お金に困ってる子がいて」
  美優はまだ顔をしかめている。なんか騙されてんじゃないか、とでも言いたげな顔だった。
  「20歳の子なんだけどね、」
  言いながら、俺、なんで美優にこんなこと喋ってるんだろうと思った。今までこの話誰にもしたことないのに。