マジックアワー

 *
  2人は遊園地に来た。
  瞬が2人分のアイスを買ってきて、ひとつを沙耶に渡す。沙耶が財布を取り出そうとするのを、瞬はアイスのスプーンを咥えながら首を振って止める。
  「いい、いい。俺、女の子に金払わせるの嫌なの」
  沙耶は瞬の顔を見つめたまま。真意を確かめるような眼差しに気がついて、瞬は付け加える。
  「え?本当だよ」
  沙耶はようやく納得し、財布をしまった。
  夜、夜景の見えるレストラン。
  沙耶が見るもの全てに目を輝かせる。その様子を楽しそうに見つめる瞬。
  「美味しい〜!」
  運ばれてくる料理をひとくち食べるなり、沙耶が感嘆の声を漏らす。その声は隣のテーブルの人に聞こえるくらい大きかったみたいで、その人が沙耶を見る。沙耶がそれに気づいて
  「ごめんなさい」
  と、罰が悪そうに肩をすくめる。その人は、かぶりを振って
  「よかったね」
  と言って微笑んだ。優しそうな、品のあるおばさんだった。一連の流れを見ていた瞬は、口から可愛いなぁ、とこぼす。
  「美味しい?」
  瞬が聞くと、沙耶は
  「うん!」
  と、とびきりの笑顔で頷いた。
  「沙耶、お酒飲める?」
  「わからない。あんま飲んだことない」
  「ちょっと飲んでみる?」
  「うん」
  沙耶はカクテル二杯で頬がほんのり赤くなった。
  「あんま強くなくてごめん。つまんないよね」
  沙耶が言う。
  「そんなことないよ」
  本当にそんなことない。むしろ、可愛い。