総長は姫を一途に溺愛する。

水族館を出た後、蓮先輩が手をつないで歩く帰り道。
夜の街は静かで、街灯がポツポツと灯っている。
空気は少し冷たいけれど、蓮先輩の手の温もりがじんわりと体に伝わって、寒さなんて感じない。

「ひまり、こっちに来てみろ」
彼が指さす先には、街の高台から見下ろす夜景が広がっていた。
光の海が広がり、遠くの街灯がまるで宝石のように輝いている。

「……わぁ……綺麗……」
思わず声を上げると、蓮先輩は私をそっと抱き寄せる。
その腕の温もりに、胸がぎゅっと締め付けられる。

「ひまり……この景色、俺たちだけの時間だな」
低く囁く声が耳に触れる。
頬が熱くなる。自然と体を彼に寄せ、心臓の鼓動が速くなるのを感じる。

「蓮先輩……」
思わず名前を呼ぶと、彼は少しだけ顔を近づけて、私の目をじっと見つめる。
その視線に、体が自然に震える。

「ひまり……ずっと俺のそばにいてくれ」
耳元で囁く言葉に、胸が締め付けられ、心臓が跳ねる。
「はい……ずっと、蓮先輩のそばにいます」

小さく答えると、蓮先輩は私の髪にそっと手を伸ばし、優しく撫でる。
「……ひまり」
少し息をのむ声が耳に触れ、体が熱くなる。

そして、彼はそっと唇を重ねてきた。
柔らかく、温かい唇。初めてではないはずなのに、今夜の空気と景色が甘さを増幅させる。
思わず目を閉じて、体を自然に彼に預ける。

「……蓮先輩……」
小さく呟く声に、彼は優しく応える。

「ひまり……誰にも渡さねぇ……俺だけの姫だ」

胸に押し付けられるように抱きしめられ、体中に熱が広がる。
夜景の光が二人を包み込み、まるで世界が二人だけのために存在しているように感じる。

しばらく唇を重ねたまま、二人の世界に浸る。
心臓の鼓動と呼吸が重なり、体中が甘い幸福感で満たされる。

やっと唇を離すと、蓮先輩は少し照れくさそうに笑った。
「……ひまり、もう我慢できなかった」
胸の奥が熱くなり、私も自然に微笑む。

「……私も、蓮先輩に会えてよかった……」
小さく答えると、彼はぎゅっと私を抱きしめ、頭を撫でてくれる。

「これからも、ずっとそばにいるからな……」
その言葉に、胸がぎゅっと締め付けられ、目に少し涙が浮かぶ。

夜景を背に、二人だけの甘い時間。
風が少し冷たくても、蓮先輩の腕の中にいるだけで、全てが温かく、幸せで満たされていた。

――私の蓮先輩は、世界でたった一人の人。
誰にも渡せない、絶対に手放せない人。

手を握り返す彼の温もりに包まれ、私は静かに心の中で誓った。
「ずっと、蓮先輩だけの姫でいる……」

夜景の光に二人の影が重なり、甘く、濃密な時間がゆっくりと流れていった。