放課後の校庭。夕陽が差し込み、教室の中とは違う柔らかい空気が流れている。
友達と一緒に歩いていると、ふと背後から鋭い視線を感じた。
「ひまり……」
振り返ると、蓮が校庭の端からこちらを見つめていた。眉を少しひそめ、低く息を吐くその表情は――まるで嫉妬しているかのようだった。
「え、あ……」
私は小さく息を飲む。友達と話していただけなのに、なんだか背筋がぞくりとする。
蓮は歩みを早め、私たちのすぐそばに来ると、私の腕を軽く掴んだ。
「俺の姫と話すな」
低く響く声に、思わず息が止まる。周囲の友達の視線も気になるけれど、彼の瞳から目を逸らすことはできなかった。
「そ、そんな……ちょっと話しただけです……」
困惑しながら言うと、蓮は腕を少し強く握り、私を自分の横に引き寄せた。
「俺の姫は、誰にも渡さない」
その声は低く、独占欲が混じっている。胸がぎゅっと締め付けられるような感覚に、体が自然と彼に寄ってしまう。
友達は少し驚いたように私たちを見つめる。
――無理やり姫にされたことに困惑していたはずなのに、今は少し……甘く心地よい気持ちが混ざっている。
蓮は私の髪に手をかけ、そっと撫でながら囁いた。
「俺の姫は、俺だけのものだ。絶対に離さない」
胸が熱くなる。怖い、でも守られる安心感と心地よさが同時に襲ってくる。
――私、本当にこの人の姫なんだ……
夕陽に照らされた蓮の瞳は、独占欲と愛情で輝いていた。
その瞳に見つめられ、私はただ静かに頷くしかなかった。
「……はい、わかりました」
困惑しながらも、心の奥で小さく喜んでいる自分がいた。
――怖くて甘い、この感覚に、少しだけ抗えない。



