総長は姫を一途に溺愛する。

今日は蓮先輩の大学に遊びに来た日。
キャンパスに一歩足を踏み入れると、少し緊張する。
高校の頃とは違って、大人っぽい雰囲気の中、蓮先輩は何も変わらずカッコいい。

「ひまり、こっちだ」

彼の声が響くと、思わず胸がきゅっとなる。
私は小走りで彼に近づく。
蓮先輩は、笑顔で手を差し伸べてくれる。
その手に触れるだけで、安心感とドキドキが混ざり合う。

しかし、少し離れたところで、女子たちが蓮先輩の周りに集まっているのを見て、胸の奥がざわつく。
「わぁ、蓮、かっこいい!」
「さすが、憧れだよね」

笑顔で話しかける女子たちに、蓮先輩は優しく答えている。
でも、私の目にはその様子が、なんだか甘く見えてしまう。
思わず、腕をぎゅっと握りしめる。

「……やっぱり、私だけの蓮先輩じゃないの……?」

心の中でつぶやくと、胸の奥がざわざわと締め付けられる。
蓮先輩は私の視線に気づいて、少し眉をひそめたように見えた。
そして、すぐに私の方へ歩み寄り、そっと手を握る。

「ひまり、何してんだ?」

低くて少し拗ねた声。
「……な、なんでもない……」
思わず俯くと、蓮先輩は私を自分の胸に引き寄せた。
その腕の温かさに包まれると、少し安心するけれど、心の奥の嫉妬はまだ消えない。

「俺のひまりだろ?他の奴らの目なんか気にするな」

その独占的な言葉に、胸がぎゅっと熱くなる。
「……はい……」
小さく答えながらも、体をさらに彼に寄せてしまう。

蓮先輩は腕を回し、私の頭をそっと撫でる。
「……俺のそばにいろ。誰にも渡さねぇ」

周りの女子たちはまだキャーキャー言っているけれど、今の私にとっては関係ない。
胸に押し付けられる蓮先輩の温もりだけが、全てを覆ってくれる。

――やっぱり、私の蓮先輩は、私だけのもの。
他の誰にも渡させない。

嫉妬の気持ちと同時に、独占される幸福感が心を満たしていく。
少し拗ねた顔の蓮先輩に頬をすり寄せ、私は小さく笑った。

「……もう、嫉妬しちゃう」

すると、蓮先輩は低く甘く笑い、耳元で囁く。

「いいぞ。その嫉妬、全部俺が受け止めてやる」

胸がぎゅっと熱くなり、心臓が跳ねる。
そして、大学のキャンパスの騒がしさも、周囲の目も、二人の世界には関係なかった。
――私と蓮先輩だけの時間が、そこに確かにあった。