夏の夕日が海をオレンジ色に染める中、蓮先輩と並んで砂浜に座る。
 潮の香りと、穏やかな波の音。
 この瞬間、世界には二人しかいないような気がして、胸がドキドキしている。

「ひまり……」

 低く落ち着いた声。
 私は小さく顔を上げると、蓮先輩が静かに目を見つめてくる。
 その視線だけで、胸の奥が熱くなる。

「……今日は、一日中楽しかったな」

 耳元でささやかれるその声に、思わず頬が赤くなる。
 自然と手を握り返すと、蓮先輩は少し体を近づけ、私の腰に手を回した。

「ひまり……俺のそばに、ずっといてくれ」

 その言葉に胸がいっぱいになり、自然と体を寄せる。
 蓮先輩も私に体を近づけ、唇が触れそうになる。
 鼓動が早くなるのを感じながら、目を閉じる。

 そして、ゆっくりと唇が重なる。
 柔らかくて、温かくて、でもしっかりと力強い。
 砂浜の風が頬を撫で、波の音だけが二人を包む。

 蓮先輩の手が背中を優しく撫で、私は思わず体を預ける。
 唇が離れそうで離れない、その瞬間が永遠に続けばいいと思った。

「……ひまり、俺の姫だ」

 耳元でささやかれる言葉に、思わず小さく笑い、頬を胸に押し付ける。

「はい……ずっと、蓮先輩の姫です」

 唇を離したあとも、手はつながれたまま、体はお互いに寄せ合っている。
 夕日が沈みかける海辺で、私は胸いっぱいの幸せを感じながら、蓮先輩の腕の中で小さくつぶやいた。

 ――誰よりも大切な人と、一緒にいる幸せ。
 この瞬間を、ずっと忘れたくない。

 蓮先輩は微笑みながら、私の頭をそっと撫でる。
 その温もりに、今日の思い出とこれからの未来を重ねて、私は静かに目を閉じた。